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現場の気づきを社会へ。水難教育のクラウドファンディングに学ぶ発信設計|株式会社岡崎竜城スイミングクラブ

現場の気づきを社会へ。水難教育のクラウドファンディングに学ぶ発信設計|株式会社岡崎竜城スイミングクラブ

株式会社PR TIMESとテックベンチャー総研によって共催された「クラウドファンディングから学ぶ、社会課題の伝え方と広げ方」。

本記事では、3社目の登壇企業である岡崎竜城スイミングクラブの事例をご紹介します。

長年、水難教育に取り組んできた同社が挑戦したのは、「『浮いて待て』を子どもたちの日常へ」を掲げた、水難教育ミュージックビデオ制作のクラウドファンディング。現場で感じていた課題をどのように可視化し、多くの人が参加できるプロジェクトへと変えていったのでしょうか。セミナーでは、広報PR支援を行う袈裟丸さんがモデレーターを務め、取締役の大森玲弥さんから語られた、現場で見つけた社会課題の伝え方や、支援者の反応を踏まえたプロジェクト設計についてまとめます。

株式会社岡崎竜城スイミングクラブ(愛知県岡崎市):最新プレスリリースはこちら

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現場の「当たり前」から社会課題を見つける

1973年に愛知県岡崎市で創業した岡崎竜城スイミングクラブ。水泳指導に加え、水辺で自分の命を守るための「水難教育」にも力を入れ、通常のカリキュラムに2ヵ月に一度の着衣泳を取り入れています。

創業家の一員である大森さんにとって、幼い頃からごく当たり前の取り組みとして身近にあった水難教育。しかし、経営に携わるようになってから、その認識は大きく変わりました。水泳業界について知るにつれ、継続的に水難教育を実施しているスイミングスクールは少なく、長年続けてきたこの活動が自社にとってのひとつの特色であることに気づいたといいます。

さらに、大森さんが水難教育の必要性を強く感じるきっかけとなったのが、コロナ禍です。学校の水泳授業がなくなったり、幼稚園や保育園での水泳指導が中止されたりと、子どもたちが水に触れ、泳ぎを学ぶ機会が減少しました。

実際に水に入って学ぶことが難しい状況でも、水辺で命を守るための知識を届けることはできないか。

そこで、母親で社長の大森久美さんとともに制作したのが、水難時の基本的な行動を楽しく覚えられる歌「今日からキミも!スイクンマン!」です。キャラクター「スイクンマン」とともに幼稚園などを訪れ、歌を通じて水難教育を行うようになりました。しかし、活動を続けていくうちに、「届けられる範囲」の限界を感じるようになったという大森さん。対面での活動だけでは、岡崎市外を含むより多くの子どもたちに伝えることは難しいと考え、場所を問わず歌に触れて水難時の行動を学べるよう、ミュージックビデオを制作するというアイデアが生まれました。

このミュージックビデオの制作・発信に向けて実施したのが、「『浮いて待て』を子どもたちの日常へ」を掲げたクラウドファンディングです。現場で感じていた課題をより多くの人に知ってもらい、水難教育を子どもたちへ広く届けるためのプロジェクトが動き始めました。

株式会社岡崎竜城スイミングクラブさま
水難教育「親子着衣泳」の様子

社会課題を「参加できるプロジェクト」に変える

クラウドファンディングを実施するにあたり、大森さんが軸にしたのは「しっかり届ける・共につくる・自分ごと化してもらう」という3つの目標です。

集まった支援を子どもたちが出演する映像の制作費などに充て、完成したミュージックビデオをYouTubeで公開することで、地域を越えて水難教育を届けていく。さらに、クラウドファンディングへの参加を通じて、水難事故や水難教育について知り、自分にも関わる問題として考えてもらうことを目指しました。

自社だけで費用を負担してミュージックビデオを制作することも可能ですが、「それでは水難教育の必要性を知ってもらい、多くの人を巻き込む機会にはつながりにくい」と大森さん。「支援する」という行動を入り口に、一緒にミュージックビデオをつくる仲間になってもらうことも、クラウドファンディングという形を選んだ理由のひとつでした。

こうして、2026年5月26日にスタートしたプロジェクトは目標金額を300万円に設定。約1ヵ月の募集期間を経て、全国の277名から354万円の支援が集まり、達成率118%で目標を達成しました。

クラウドファンディングを資金調達の手段として捉えるのではなく、社会課題を知ってもらい、参加するきっかけとして活用する。大森さんは、日々の現場で感じていた水難教育の課題を多くの人が関われるプロジェクトへと広げていきました。

支援者の反応を受け、伝え方と設計を変える

目標金額を達成したクラウドファンディングですが、「その道のりは決して順調ではなかった」と大森さんは振り返ります。支援がほとんど伸びない時期が続き、終了4日前の時点でも達成率は約54%。目標に届かなければ支援金を受け取れない「All-or-Nothing方式」だったため、残された時間で支援を広げる必要がありました。

大森さんはイベントなどに足を運び、プロジェクトを説明したり、知人に連絡したりと接点を拡大。そこで得られた反応から見えてきたのが、当初想定していた支援の仕組みと実際の支援者のニーズとの間にあるズレでした。

当初、高額のリターンは企業からの支援を想定し、ミュージックビデオのエンドロールに企業名を掲載するなど、協賛として参加しやすい内容を用意していた大森さん。しかし、企業が支援を決めるためには社内での承認や支払い手続きが必要で、募集期間が残りわずかになってからでは意思決定が間に合わないケースも少なくありませんでした。

そこで途中から、個人でも支援できる3万円と5万円のリターンを追加。企業だけでなく、「この活動を応援したい」と考える個人も参加しやすい設計へと変更しました。こうした柔軟な軌道修正も目標達成の一因となっています。

そして、プロジェクトそのものの伝わりにくさも課題として浮き彫りになりました。「水難事故を防ぐためにミュージックビデオをつくる」という取り組みは、支援金がどのように社会課題の解決につながるのかをひと目で理解してもらうのが難しいテーマです。大森さんは、「目的や背景をより丁寧に説明し、画像なども活用しながら支援後の変化を具体的にイメージできる伝え方が必要だった」と振り返ります。

クラウドファンディングは、プロジェクトページを公開して終わりではありません。実際の反応を受け止め、参加しやすい仕組みや伝え方へと調整し続けることが、プロジェクトを広げる力になります。

株式会社岡崎竜城スイミングクラブさま

課題の可視化から成果報告まで発信をつなげる

岡崎竜城スイミングクラブでは、クラウドファンディングの前後にも継続してプレスリリースを配信しました。意識していたのは、プロジェクトの節目ごとに新しい情報を届け、水難教育というテーマへの関心をつないでいくことです。

調査で、現場の実感を社会の課題として示す

クラウドファンディングに先立ち、大森さんは「浮いて待て」の認知度など、水難時の行動に関する調査を実施。2026年3月に発表した調査リリース『50年の水難教育結果を検証~岡崎は3人に1人が「ウイテマテ」を実践、全国は1割止まり』では、「水に落ちたらどうする?」という問いに、全国の子どもの53%が回答できなかったという結果を伝えました。

普段、大森さんが接しているのは、泳ぎを学び、着衣泳も経験している子どもたちばかり。そのため、水難時の行動を知らない子どもが全国にどれほどいるのかは、現場にいるだけでは見えにくかったといいます。調査によって、自社が感じていた問題意識を数字で捉え直すことができました。

そして、5月には課題に対する具体的なアクションとして、ミュージックビデオ制作のクラウドファンディングの開始を伝えるプレスリリースを配信。課題の提示だけでなく、その課題に対して自分たちが何をするのかまで示しているのがポイントです。

プロジェクトの進展を、新たな発信の機会にする

目標達成後もプレスリリースの発信は続きます。7月にはクラウドファンディングの達成を伝え、7月20日の「水難訓練の日」には、子どもたちが「今日からキミも!スイクンマン!」に合わせて踊るイベントを実施。実際に子どもたちが参加する様子を写真や映像で伝えることで、「誰のためのプロジェクトなのか」「ミュージックビデオがどのように活用されるのか」を具体的に示しました。

そして8月27日には、完成したミュージックビデオの一般公開に合わせて再度プレスリリースを配信。支援企業名も掲載し、プロジェクトへの参加と取り組みへの思いを広く伝える機会をつくりました。

こうした継続的な発信によって、メディアとの接点も拡大。プレスリリースをきっかけにさまざまなメディアから声がかかったほか、大森さん自身も地域の記者やメディアへ積極的に情報を届けました。ひとつの露出が別の取材につながるなど、情報が広がっていく動きも生まれたそうです。

調査で課題を可視化したうえで具体策を示し、その進展や成果を伝えていく。ひとつのプレスリリースで完結させるのではなく、プロジェクトの時間軸に沿って新しい事実を積み重ねることで、社会課題を継続的に伝える機会を創出した大森さん。岡崎竜城スイミングクラブは、現場で見つけた課題を社会へ広げるため、発信そのものを一連のストーリーとして設計していました。

株式会社岡崎竜城スイミングクラブさま
「水難訓練の日」特別イベント「プールびらき」の様子

まとめ:自社の日常に眠る社会との接点を見つける

長年続けてきた水難教育をあらためて見つめ直したことで、その活動が「自社ならではの特色」であると気づいた岡崎竜城スイミングクラブ。現場で抱いていた問題意識は、調査によって社会に伝わる「数字」となり、クラウドファンディングでは多くの人が参加できるプロジェクトへと発展しました。さらに、その過程や成果を継続して発信することで、水難教育への関心を広げています。

自社では当たり前になっている取り組みも、社外から見れば、「その企業だからこそ語れる社会との接点」になることがあります。大切なのは、日々の活動をそのまま伝えるのではなく、「なぜ取り組んでいるのか」「社会にどのような課題があるのか」を捉え直すこと。そして、調査や具体的なアクションを通じて、その問題意識を社外の人にも理解し、関わってもらえる形にしていくことです。

自社の取り組みを社会課題と結びつけて発信するには、その活動が生まれた背景や現場で感じている変化に目を向けることから始まります。日々の業務の中にある気づきを掘り下げ、調査や具体的なアクションを通じて社外の人が理解し、関われる形に整える。そうした積み重ねが、現場の課題を多くの人と共有し、共感や参加を広げる広報PRにつながります。

「クラウドファンディングから学ぶ、社会課題の伝え方と広げ方」について
社会課題というと、環境問題や地域が抱える課題など、社会全体にかかわるテーマを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、その入り口は必ずしも大きな問題意識である必要はなく、日々の企業活動の中でふと感じた疑問や、「もっとこうなったらいいのに」という身近な気づきから生まれることもあります。そうした小さな気づきを社会に開かれたテーマへと育て、多くの共感や参加を呼び込むには、どのような伝え方が必要なのでしょうか。

社会課題を発信してきた3つの企業・団体のクラウドファンディング事例から、プロジェクト設計や情報発信のポイントを学ぶセミナーとして、株式会社PR TIMESとテックベンチャー総研が共催しました。

登壇者プロフィール

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大森 玲弥のプロフィール画像

株式会社岡崎竜城スイミングクラブ 取締役

大森 玲弥(Omori Raemi)

クラブ創設者の祖父から受け継いだ志をもとに、運営と広報を担当しています。アメリカでの幼少期を経て、名古屋大学法学部を卒業、東京大学ロースクールを経てエディンバラ大学で社会学の修士号を取得。競泳、水球、アーティスティックスイミングに青春を捧げた経験を活かし、地元岡崎と国内外で水難防止に取り組む社会貢献活動を推進しています。

【モデレータープロフィール】 

袈裟丸 梨里子のプロフィール画像

テックベンチャー総研 企業広報研究会事務局長/一般社団法人パワーストローク広報顧問/株式会社AJプランニング 代表取締役社長/広報コンサルタント・メディカルプランナー

袈裟丸 梨里子(Kesamaru Ririko)

医療系BtoB企業の広報部立ち上げとマネジメントを経験後、医療ロボットベンチャーからオファーを受け転職するも、コロナ禍の影響から半年で倒産の憂き目にあう。この経験をバネにTech系専門広報として独立し、ピーク時には7社を請け負うまでに成長。そのうちの1社から多数のメディア露出実績を認められ執行役員CMOとして事業成長に貢献。退職後は幅広い経験を生かし、大手企業の広報アドバイザリー業務、講師活動、教育系事業支援などに積極的に取り組んでいます。2024年10月よりPR TIMES公認プレスリリースエバンジェリストとして活動。

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この記事のライター

PR TIMES MAGAZINE執筆担当

PR TIMES MAGAZINE執筆担当

『PR TIMES MAGAZINE』は、プレスリリース配信サービス「PR TIMES」等を運営する株式会社 PR TIMESのオウンドメディアです。日々多数のプレスリリースを目にし、広報・PR担当者と密に関わっている編集部メンバーが監修、編集、執筆を担当しています。

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