企業の広報PR活動やマーケティングにおいて、SNSは今や生活者とつながる大切な接点のひとつです。一方で、「アカウントを開設したものの、活用の仕方がわからない」「リーチが伸び悩んでいる」「目標設定や効果測定に迷っている」という担当者も多いのではないでしょうか。
株式会社PR TIMESは2026年6月26日、広報PR担当者向けSNS最新活用術セミナー「Meta social communication session」をMeta日本法人 Facebook Japan合同会社と共催。第一部では、同社の市村怜子さんと山谷道裕さんが、InstagramとThreadsの最新トレンドやアルゴリズムの考え方、企業アカウントを成長させるための実践的な運用ポイントについて解説しました。本記事では、当日の講演内容と質疑応答をもとにレポートします。

Meta日本法人 Facebook Japan合同会社 グローバルパートナーシップス パートナーソリューションマネージャー
山谷 道裕10年以上にわたりソーシャルメディア業界に従事。前職ではテキストソーシャルメディアプラットフォームで広告営業を担当し、幅広いクライアント支援を経験。2021年よりMetaに参画し、APAC地域のクリエイターパートナーシップを担当するパートナーソリューションマネージャとして東京オフィスを拠点に活動。グローバルパートナーシップチームの一員として、クリエイターやパートナー企業との連携、プロジェクト管理、戦略立案を通じてMetaのクリエイターエコシステムの成長に貢献している。
認知拡大から関係構築まで、Instagramの活用ポイント
生活者との重要なタッチポイントとして、多くの企業が取り入れているInstagram。検索機能を活用した新規顧客との接点創出やフォロワーとの関係構築まで、期待できる効果は多岐にわたります。
まずは、投稿の使い分けや、アカウント成長を加速させる運用のポイントを見ていきます。
リール・フィード・ストーリーズ・ライブ配信の特徴と役割
Instagramは、多様な投稿フォーマットが大きな特徴であり、強みのひとつです。しかし、選択肢が多いからこそ「どれを使えばよいのかわからない」という課題も生まれやすいと市村さんは話します。
【Instagramの主な投稿フォーマット】
- リール:エンタメ性の高いショート動画として、新しいオーディエンスやフォロワー外へのリーチを広げるのに適したフォーマット。特に認知拡大を図る際に有効
- フィード/カルーセル:写真や動画を投稿できる「フィード」投稿のうち、複数枚投稿ができる「カルーセル」は、商品説明やサービス紹介など、情報を丁寧に伝えたい時に最適。カルーセルは楽曲をつけることでリールタブに表示される場合もあり、リーチを伸ばしやすい投稿フォーマットとしてもおすすめ
- ストーリーズ:新規フォロワーの獲得というよりも、既存フォロワーとのコミュニケーションを深める役割。定期的なストーリーズの投稿によりフォロー解除されづらい傾向もあるとされ、ファンとの関係性を維持・強化するうえで積極的に活用したい機能
- ライブ配信:リアルタイムでのやりとりができるため、商品紹介やファンとの交流に最適。視聴者との双方向性を生かし、より熱量の高いコミュニケーションを生み出す場として活用できる
大切なのは、それぞれの役割や特徴を理解したうえで、コンテンツや運用戦略を設計すること。また、複数のフォーマットを組み合わせて活用すると、フォロワー外へのリーチも伸びやすい傾向があるそうです。

新規のファン獲得に欠かせない「リール」活用
これらのフォーマットの中でも、フォロワー外へのリーチ拡大や新規ファンの獲得を目指すうえで欠かせないのがリールです。
Meta社のデータによると、近年リールは利用時間全体の50%を占め、DMでのシェアも1日45億回。直感的に「いいな」「おもしろい」と感じた瞬間に、友人や家族へDMでシェアするということが日常的になっています。実際、リールを月10本以上投稿するアカウントはフォロワー数の伸び率が高いという傾向もあり、リールはアカウントを成長させるための重要な手段です。
とはいえ、リールを見てもらえるのかという不安もあるでしょう。この点について、Meta社ではフォロワー数の多さにかかわらず、あらゆるアカウントやビジネス、クリエイターのコンテンツが注目されやすくなる仕組みづくりを進めているのだそうです。例えば、「サッカーのトリックショット」というニッチな内容のリールを投稿した場合、最初はそのトピックに強い関心を持つ限られた層に表示。そこで視聴者の反応が良ければ、価値のあるコンテンツと判断し、「サッカー全般」→「スポーツ全般」→「エンタメ全般」へと、より広い層におすすめされます。
つまり、最初に届いた人たちの反応が良ければ、フォロワー数の少ないアカウントであっても、より多くの人に広がっていく可能性があります。単に投稿本数を増やすのではなく、視聴者が思わず反応したくなるコンテンツ制作への意識が大切です。
【意識したい5つの視点】
- 最後まで見たくなる動画になっているか(視聴維持率に直結)
- 何度も見返したくなる内容か(繰り返し視聴も評価)
- 保存したくなる情報が含まれているか(後から参照したい情報としての価値)
- 周囲にDMでシェアしたくなる内容か(シェアしたくなる = 価値のある情報)
- コメントやいいねなどの反応が生まれやすいか(関係強化にはエンゲージメント)
クリエイティブな挑戦を後押しする「トライアルリール」
最近のリール活用で特に注目してほしいのが「トライアルリール」とのこと。特徴は、まずフォロワー以外の人たちに向けて投稿を配信し、テスト的に反応を確認できることです。フォロワー外からの反応が良ければ、そのまま通常投稿として広く公開し、既存フォロワーのフィードにも届けることも可能。反対に、期待した反応が得られなかった場合は、全体へシェアせずにとどめておくことができる機能です。「既存のフォロワーに受け入れられるか」「雰囲気が変わりすぎてファンが離れてしまわないか」といった懸念を避け、新しい切り口を試しやすくなっています。
リール投稿の成果を左右するのは「視聴維持率とシェア数」
Instagramを運用するうえで、気になる方も多い「アルゴリズムの攻略」ですが、アルゴリズムは単一ではなく、リールやストーリーズなどの投稿のフォーマットごとに評価基準が異なります。
例えば、リールで重視されるのはコンテンツそのものへの関心です。ユーザーの視聴履歴に基づく興味関心とコンテンツがどれだけマッチしているかが鍵となり、「視聴時間」や「シェア数」が評価を左右します。また、既存フォロワーには「いいね」やコメントといった親密度を示す反応が重要になるのに対し、新規層への拡散では「シェア数」が評価に直結するなど、フォロワーかどうかによっても指標は変わります。
「透明性センター(Transparency Center)」で機能ごとの評価の仕組みが明文化されているため、あわせて参考にしてみてください。

会話から接点を広げるThreadsの企業活用
Instagramが主に画像や動画を共有するのに対し、テキストベースのプラットフォームとして成長を続けるのが、2023年7月に登場した「Threads(スレッズ)」。月間のアクティブユーザーは2026年6月時点で5億アカウントを突破しています。
企業がThreadsを活用するには、どのような機能を押さえ、どのように投稿を設計すればよいのでしょうか。基本機能からユニークな機能、リーチ拡大やフォロワー獲得につながるアルゴリズムを踏まえた運用のポイントを見ていきます。
企業発信に注目のThreads4つの機能
投稿のしやすさや表現の幅を広げる機能があるThreads。企業アカウントで活用しやすい機能として、山谷さんは4つを挙げています。
- ゴースト投稿:24時間で自動的に消える投稿。フィードに表示されるほか、プロフィール上に吹き出しとして表示される。長い時間残すほどではない、その時々の気持ちやリアルタイムの出来事を共有したいときや、スポーツイベント・展示会・キャンペーン期間中など、瞬間的な盛り上がりを届けたいときに最適
- テキスト添付:通常の投稿文とは別に、最大1万字までのテキストを投稿に添付。投稿本文だけでは伝えきれない情報を補足したいときに活用でき、ブログの冒頭、レシピ、商品レビュー、イベントレポートなど、まとまった内容を一つの投稿で届けられる。リンクと組み合わせて、外部記事やWebサイトへ誘導する使い方も
- ネタバレ防止機能:投稿内の一部のテキストや画像、動画、GIFを隠して表示できる機能。閲覧者がタップするまで内容が見えないため、映画やドラマ、漫画、ゲームなどの最新話題について、未視聴の人に配慮しながら発信できる。イベントや新商品情報など、情報の出し方に配慮したい場面にもおすすめ
- インラインスタンプ:テキストの中にアニメーションスタンプを挿入できる機能。画像エリアではなく文章の中に溶け込む形で表示され、テキストだけでは伝えきれない感情やニュアンスを補足。ユーザーとの距離感を近づけたい投稿や、親しみやすさを出したいコミュニケーションに最適
おすすめフィードに表示されやすい投稿を設計
Threadsでリーチを広げるには、おすすめフィードに表示されることが重要です。投稿はユーザーの興味関心に合わせてAIがランク付けを行って選びますが、いいねや投稿のタップ・返信・プロフィール訪問など、「ユーザーが投稿に関心を持ち、何らかの行動を起こしそうか」を軸に評価されます。

そのため、「ユーザーが思わず反応したくなるか」を意識した設計が前提です。Threads運用で押さえたいポイントとして、以下の4点が紹介されました。
冒頭で手を止めてもらう
Threadsはテキストを中心としたプラットフォームのため、投稿の最初の1〜2行が特に重要。フィード上で目に入った瞬間に「続きを読みたい」と思ってもらえなければ、すぐにスクロールされる。伝えたい情報をそのまま書き始めるのではなく、読者の関心に近い問いかけや気づきから入ると、手を止めてもらいやすい。
返信したくなる余白をつくる
Threadsでは、返信が活発な投稿もおすすめフィードに表示されやすい。投稿直後だけでなく、時間が経ってからも会話が続いているかが見られており、投稿後のコミュニケーションも欠かせない。意見を聞く、体験を共有してもらう、選択肢を提示するなど、ユーザーが返信しやすいきっかけをつくることで、会話が生まれやすくなる。返信が来たら反応を返し、会話を育てていくこと。
プロフィールまで見たくなる投稿にする
投稿をきっかけにプロフィールを訪問されることも、ユーザーの関心を量る行動のひとつ。投稿内容から「この企業は何を発信しているのか」「ほかの投稿も見てみたい」と思えるように、プロフィール訪問やフォローにつながる導線を意識すること。また、プロフィール文や固定投稿を整えておくことが、アカウント成長につながります。
トピックタグで見つけてもらう
トピックタグは、まだフォローされていないユーザーに投稿を見つけてもらうための大切な入口のひとつ。投稿内容に合ったタグを付けることで、同じテーマに関心のあるユーザーの目に触れやすくなる。ただし、関係のないタグを付ければよいわけでは決してなく、投稿のテーマに合ったタグを選択することで、リーチを広げることができる。
表示されにくい投稿は避け、価値のある発信を継続
コンテンツ配信ガイドラインが設けられており、以下のような投稿はおすすめフィードに表示されにくくなることもあります。
- エンゲージメントベイト:フォローや返信、いいねなどを不自然に促す投稿。「返信してくれた人を全員フォローします」といった、本質的ではない反応を誘導する投稿は、表示されにくくなる可能性も
- 低品質なバイラル投稿:ショッキングな表現や、誤解を招く内容で注目を集めようとする投稿。アルゴリズムを利用して無理に拡散を狙うような投稿も、好ましくないものとして扱われる対象に
- 有害・煽りコンテンツ:怒りや対立を過度にあおる投稿。ガイドライン違反としてアカウント停止の対象になるとは限らないものの、投稿自体がおすすめフィードに表示されにくくなることもある
「企業やメディアがThreadsを活用する際は、短期的に反応を集めるテクニックに頼るのではなく、ユーザーにとって価値のある発信を続けることが大切」と話す山谷さん。実際、継続的な発信もやはり重要とのことです。
過去1週間や1ヵ月間のエンゲージメント履歴も評価の際に見られているため、短期的な投稿ではなく、発信を続けながら反応を積み上げていくことがアカウント成長につながるのだといいます。目安として、週に7回以上の投稿が理想的とのこと。まずは投稿のリズムをつくり、役立つ情報を届ける、疑問や課題の解決につなげる、会話を楽しめるきっかけをつくるといった投稿の積み重ねが、結果としてリーチやアカウント成長につながるでしょう。

【質疑応答】参加者からの質問にMeta・市村さん・山谷さんが回答
ここからは、当日セミナー会場で寄せられた質問の一部を抜粋し、おふたりの回答とあわせて紹介します。
──アカウントを新しく立ち上げる場合、まず何からはじめるとよいのでしょうか。
山谷さん(以下、敬称略):まず大切なのはプロフィールを整えることです。InstagramでもThreadsでも、おもしろい投稿に出会ったら、フォローをする前に一度プロフィールを訪れて「どのくらいの頻度で投稿しているのか」「最近はどのような内容を発信しているのか」を確認するケースが多いと思います。プロフィールは、初めてアカウントを訪れた人に見せるものなので、自社がどのような企業で、どのような情報を発信しているのかを丁寧に伝えることがポイントです。
また、新規の認知を獲得するには、Instagramではリールなどの縦型ショート動画の活用が欠かせません。縦型動画はInstagramだけでなく、ほかのプラットフォームでも展開しやすいため、まずはショート動画をどう活用するかを考えることが大切です。
──「インスタ映え」するような写真や動画を継続的に撮る余力がない場合は、どうすればよいのでしょうか。
山谷:動画をまったく作らずにInstagramのリーチを伸ばすのは、やはり簡単なことではありません。一方で、Threadsであれば、テキストだけの投稿や画像付きの投稿でも、新規層に届く可能性もあるでしょう。ThreadsからInstagramへ移動することは、まったく別のプラットフォームから移動するより心理的なハードルが低く、実際に、写真を中心に投稿しているクリエイターがThreadsで認知を広げ、そこからInstagramのフォロワー獲得につながったケースもあります。
ですから、ショート動画の制作が難しい場合は、Threadsのようにテキストや写真でも新規層に届きやすいプラットフォームを活用するのもひとつの方法です。ただし、Instagramを成長させるうえでは、「ショート動画はやはり攻略したほうがよい」と個人的には思っています。
──とはいえ、動画の撮影や編集はなかなかハードルが高いと感じてしまいます。
市村さん(以下、敬称略):必ずしも完璧に作り込まれていなくてもいいんです。Instagramでは、企業の完成度の高い動画だけでなく、一般の方やクリエイターがスマートフォンで撮影したラフな動画も多く表示されていますから、その中に並ぶことを考えると、高価なカメラで撮影したり、長い時間をかけて編集したりする必要はありません。
Metaでは、スマートフォンで縦型動画を編集できる「Edits」というアプリも提供しています。基本的な編集機能も備わっているので、まずはEditsで作れる範囲のリールから試してみるのもよいのではないでしょうか。
山谷:あとは、動画制作が得意なクリエイターを起用するのもひとつの方法です。必ずしも大規模なクリエイターである必要はなく、これから伸びていく段階のクリエイターで、ブランドの世界観に合う方を探してみるとよいでしょう。
Instagramには複数のアカウントでひとつの投稿を共有できる「共同投稿機能」もあるので、動画制作はクリエイターに任せ、企業アカウントと共同投稿することが可能です。企業側は動画コンテンツを活用でき、クリエイター側にとっても企業アカウントとの共同投稿が実績や信頼につながるので、そういう投稿をシリーズ化してもおもしろいと思います。
まとめ:生活者の反応を生む視点を軸に運用しよう
生活者とのタッチポイントが多様化するいま、企業のSNS活用では、ただ情報を発信するだけでなく、それぞれのプラットフォームの特性を理解し、目的に応じて使い分ける視点が求められています。
- Instagram:リールやフィード、ストーリーズなどのフォーマットごとの役割を踏まえながら、認知拡大やファンとの関係構築につなげる
- Threads:テキストを起点に会話が生まれる特性を生かし、生活者との自然なコミュニケーションや新たな接点づくりに活用する
どちらのプラットフォームにも共通しているのは、アルゴリズムを細かく攻略すること以上に、生活者にとって価値のある発信を続けること。思わず見たくなる、反応したくなる、誰かに共有したくなる。そうした投稿を継続的に積み重ねることです。
自社アカウントの運営や生活者との関係構築に課題を感じている広報PR・マーケティング担当の方は、ぜひ今後のSNS運用に生かしてみてはいかがでしょうか。
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