記事検索

「知られていない」から抜け出したCM施策。BtoB企業が取り組んだ採用に向けた認知拡大戦略|渡辺パイプ株式会社

「知られていない」から抜け出したCM施策。BtoB企業が取り組んだ採用に向けた認知拡大戦略|渡辺パイプ株式会社

採用競争が激化するなか、「知られていないこと」そのものが課題となるBtoB企業は少なくありません。上下水道資材や住宅設備機器など、暮らしのインフラを支える専門商社である渡辺パイプ株式会社も、認知拡大という大きな壁に直面していました。そうした中、今年3月に開催されたNetflix独占のWBC中継で流れた同社のCMは大きな話題を呼び、社内外にさまざまなインパクトをもたらします。

従来の「待ち」の姿勢を捨て、戦略的に攻める「設計する広報」へと転換した同社。本記事では、経営企画ユニット 広報・社長室グループの野呂祐介さんと伊藤健太さんにインタビューを行い、大きな反響を呼んだCMの舞台裏と採用成果を目指す広報戦略について伺いました。

渡辺パイプ株式会社(東京都千代田区):最新のプレスリリースはこちら

野呂 祐介のプロフィール画像

渡辺パイプ株式会社 経営企画ユニット 広報・社長室グループ 

野呂 祐介(Noro Yusuke)

大学卒業後、フィットネスクラブにてトレーナーとして勤務。その後、広告媒体社にて広告領域の実務経験を積む。続いてブランディング会社にて、企業やサービスの価値を整理し、ブランドコンセプトの策定から各種アウトプットの企画・推進に従事。ブランドの構想段階から関わりながら、方向性を具体化する業務を担う。2020年に渡辺パイプ株式会社へ入社し、これまでの経験を活かして業務に取り組んでいる。

伊藤 健太のプロフィール画像

渡辺パイプ株式会社 経営企画ユニット 広報・社長室グループ

伊藤 健太(Ito Kenta)

大学を卒業後2018年に新卒で入社。6年間インフラ・住宅に関わる商材の販売を行う専門商社部門の営業を経て、経営企画ユニット 広報・社長室グループへ異動。現在はコーポレートサイト管理や社外向けリリースの作成を担当。

「設計する広報」への転換で認知拡大を目指す

──本日はよろしくお願いします。さっそくですが、広報PRの組織や体制について教えていただけますでしょうか。

野呂さん(以下、敬称略):当社の広報PRは経営企画ユニットの中にある「広報・社長室グループ」が担っており、社内広報と社外広報の両軸を一体的に運用しています。

現在のメンバーは6名。経営層と近い距離で連携しながら、社内ニュースの発信をはじめ、事業や採用に関する情報、CSRの観点も含めて幅広いテーマを横断的に発信しているのが特徴です。

──そうした組織の中で、現在、広報チームが追いかけている具体的なミッションや目標はどこに置かれているのでしょうか。

野呂:社外広報は、「いかに会社の認知を高めるか」を大きな目標にしています。当社は現在、住宅や建築資材の流通商社として認知いただいていることが多いのですが、より広く「生活インフラを支える企業」としての認知拡大を直近5年の目標として掲げています。そのうえで、採用力や事業理解の向上につなげていく方針です。

一方、社内広報ではエンゲージメントの向上を重視しています。従業員に自社への理解を深めてもらうことはもちろん、帰属意識の醸成にも力を入れていきたいですね。

従業員の友人や家族、子どもたちに「入社したい」と思ってもらえるような会社になることも目標のひとつです。すぐに達成できるものではありませんが、少なくとも「大切な人に入社を勧めたくなる会社」を目指し、日々取り組んでいます。

──「大切な人に勧めたくなる会社」という視点は大切ですよね。そうした取り組みに至るまでにはどのような背景があったのでしょうか。

野呂:大きな転換点は、「待ちの広報」から「設計する広報」へと舵を切ったことです。その背景には採用課題がありました。ここ数年は毎年約250名を採用していますが、社内目標である300名には届かない状況が続いています。

認知が広がるのを待つのではなく、自分たちから積極的に取りにいく必要があるという議論が生まれました。これまでは定型的な情報発信が中心でしたが、今は「いつ」「何を届けるか」を意識し、コミュニケーションを設計する形へと変化しています。「どのように認知され、記憶に残るか」を重視し、テレビCMでも採用の時期に合わせて出稿量を調整。採用への効果を最大化できる施策、タイミングを組み立てています。

また、媒体の選定も目的やタイミングを踏まえて検討するようになりました。以前は甲子園等の球場広告掲出が中心だったのですが、複数メディアを組み合わせた展開へと広がっています。

参考:話題のCM「ススメ、現場の最前線。

渡辺パイプさま 企業広告

WBCでのCM放送が社内外で大きな反響に

──大きな話題を集めた、WBC中継で流れたCMについてもお聞きしたいです。

伊藤:一番の狙いはやはりリクルート強化に対する投資です。当社は業界内での認知はある一方で、一般的な認知度は決して高いとはいえず、採用市場においても「知られていない」ことが大きな課題となっていました。

そのため、まずは「名前を知ってもらう」「記憶に残る」ことを最優先としてとらえ、短期間でより到達力の高いマスメディアを活用したコミュニケーションを設計しました。

──大きなプロジェクトだったと思いますが、具体的にどのようなスケジュールで進めていったのでしょうか。

野呂:2025年初頭にCMの企画を開始し、春先にかけて各代理店から提案を募りました。当社で活躍している人材を思い浮かべ、各代理店にはスポーツイベントと連動したCM出稿を前提に提案をお願いしていました。

その後、5月から6月にかけて内容を精査し、複数の選択肢の中から今回のCMを選定しました。また、CMには従業員も出演していますが、ロケ地となる営業所を決定し、支店長や所長に相談したうえで従業員に協力を依頼するなど、社内の調整も並行して進めていきました。

──年明けから一気に進めたのですね。放送後、社内外の反響はいかがでしたか。

野呂:CMの放送後、営業メンバーは行く先々で「CMを見た」「印象に残った」と声をかけていただけるらしく、反響の大きさを実感しています。

目標とする採用300人に到達するにはまだまだ時間がかかると思いますが、エントリー前の段階で企業名の認知や親近感が醸成されている実感はあります。具体的なエントリー数も前年比で約2倍と増えていますし、人事からは「今後も継続してほしい」と言われています。

一方、社内の反応としては、友だちや家族、両親から「あなたの会社、CMに出てたよ」と言われて嬉しかったという声も多く聞かれます。リクルートに狙いを定めた施策ではあったものの、実際には社内エンゲージメント向上の側面でも一定の効果があったのではないでしょうか。社内SNSや拠点単位でCMが自発的に共有されていったのも印象的でした。

渡辺パイプさま インタビュー野呂氏

双方向のコミュニケーションで「つながり」を醸成

──テレビCMなど社外に向けた取り組みだけでなく、社内広報にも力を入れているそうですね。具体的にどのようなことに取り組まれているのかお伺いできますか。

伊藤さん(以下、敬称略):一方通行の発信ではなく、社員が参加・発信できる双方向型の仕組みへと転換を図っています。これまでは社内報で情報を発信するばかりで、従業員とのキャッチボールはできませんでした。当社は拠点数が多く、従業員同士の接点が限られているからこそ、「つながりを生み出す媒体」にしていく必要があると考えての対応です。

数年前に社内交流を促進できるようなプラットフォームを導入して、こちらからの発信に対して従業員がリアルタイムで反応できる仕組みをつくりました。

──全国に拠点がある御社だからこそ、デジタルの場での交流が重要になるわけですね。そうしたプラットフォームを運用する中で、特に大切にされている視点はありますか。

野呂:特に重視しているのは、現場からの発信です。当社は6,000人を超える規模で全国に拠点があるため、広報から何かを発信するよりも、現場からの情報のほうが従業員には伝わりやすいと思うんです。実際に、各エリアから発信される取り組みやイベントに関する情報に対し、本社のメンバーがコメントをしたりスタンプで反応することで、双方向のコミュニケーションも生まれています

少しずつではあるのですが、実際に投稿した人の中には、ほかの人からのポジティブな反応が励みになって、2回目、3回目の投稿につながることもあるんですよ。

当社はほかのエリアでどのような取り組みが行われているのか、従業員同士でもあまり知られていないため、投稿が増えていくことで、結果的に情報共有が進んでいきます。

これから推進していかなければならない点ではありますが、本社からの一方的な発信ではなく、双方で活発なやり取りができる状態をつくることが目標です。

社内に眠る情報をニュースとして社会に貯めていく

──ここからは、プレスリリースについてお聞きしたいと思います。社内のニュースを集める際にどのような点を意識されていますか。

野呂:情報収集についてはアナログな方法をとっていて、各部署と月1回ミーティングを行い、その場で発信できるニュースがないかを確認しています。もちろんそれだけでは十分ではないため、日々のやり取りの中でもアンテナを張り、部署や事業部ごとの情報交換も行っています。

現場では自分たちの取り組みが社外に発信できるニュースだと認識されていないケースも少なくありません。部署の活動の一環として取り組んでいるだけで、「これがニュースになる」という発想自体がないこともあるんです。「それはニュースとして活用できます」と伝えると驚かれることも多いんですよ。

まだ表に出ていない情報が多くあるからこそ、広報側から積極的にニュースを見つけにいく姿勢が重要だと考えています。また、経営企画から早い段階で情報を共有してもらうことも意識しているポイントです。

──「現場の当たり前」の中にこそ、光るネタが眠っているのですね。そのようにして見つけた情報をプレスリリースとして配信する際、野呂さんが特に心がけていることは何ですか。

野呂:「今、ニュースになるかどうか」だけではなく、情報として世の中に出した状態で「貯めておく」ということを意識しています。例えば、以前「広告を出稿しました」というプレスリリースを配信したことがありますが、今回WBCに広告を出したことがきっかけで、過去のプレスリリースをメディアの方が引っ張ってきて「こんなところにも看板が出ている」と注目してくださったことがありました。

今すぐに取り上げられたり、目に留まったりしなくても、いずれ「価値のある情報」になる可能性もあります。認知拡大を目指すフェーズだからこそ、「これはプレスリリースを配信しても意味がない」ではなく、出せるものはどんどん出していって、世の中に「渡辺パイプ」のニュースとして蓄積していくことが大切だと思います。

──「情報のストック」が、思わぬタイミングで注目を集めることもありますよね。では最後に、これからどのようなことに取り組んでいきたいかお聞かせください。

伊藤:BtoB企業ということもあり、一般生活者にとっては接点が少ない存在です。それでも、名前を聞いたときに「ああ、あの会社だ」と想起してもらえるような認知をしっかりと獲得していきたいと考えています。

広報としては、何がきっかけで関心を持ってもらえるかはわかりません。だからこそ、今後もさまざまなニュースを発信し続け、情報を社会にストックしていくことが大切だと思います。

野呂:私たちは「専門商社」として、社会になくてはならない存在を目指しています。その前提として、自分たちの事業が生活インフラを支えているという軸がありますが、今後はその役割をより多角的に発信し、社会課題や地域との関わりといったテーマにも踏み込みながら、企業としての存在意義をより明確に伝えていきたいですね。

広報PRは単なる情報発信ではなく、企業と社会、そして従業員と会社をつなぐ大切な接点なので、認知度の向上にとどまらず、理解や共感、さらには「選ばれる理由」へとつながるコミュニケーションを設計していくのが理想です。今回のWBCのCMではSNS上でもさまざまな反応をいただきました。こうした声もひとつのコミュニケーションだととらえ、今後も単なる発信で終わらない取り組みを進めていきたいと思います。

渡辺パイプさま インタビュー伊藤氏

まとめ:認知を広げ、選ばれる理由をつくるBtoB企業

「待ちの広報」から「設計する広報」へと転換し、認知拡大に取り組んできた、渡辺パイプ株式会社。採用課題を起点にコミュニケーション設計を見直し、テレビCMや多様なメディア展開を通じて「記憶に残る接点」の創出に成功しています。

一方で、社内においても双方向のコミュニケーションを重視し、現場からの発信を起点にした「つながり」の醸成を推進。オンラインとリアルの双方からコミュニケーションを育てることで、従業員のエンゲージメント向上にもつなげています。

野呂さんと伊藤さんのお話で特に印象的だったのが、社内に眠る情報を積極的に掘り起こし、「社会にストックしていく」という考え方です。即効性のあるニュース価値にとらわれず、「いつか価値になる可能性」を見据えて発信を続ける姿勢は、認知拡大フェーズにある企業にとって重要な示唆といえます。

広報PRを単なる情報発信にとどめず、企業と社会、そして従業員をつなぐ接点としてとらえる。理解や共感、さらには「選ばれる理由」へとつながるコミュニケーション設計は、BtoB企業に限らず、さまざまな企業の広報PRにおいても参考になる取り組みではないでしょうか。

新たな認知拡大の施策にも注目です。

PR TIMESのご利用を希望される方は、以下より企業登録申請をお願いいたします。登録申請方法料金プランをあわせてご確認ください。

PR TIMESの企業登録申請をする

この記事のライター

PR TIMES MAGAZINE執筆担当

PR TIMES MAGAZINE執筆担当

『PR TIMES MAGAZINE』は、プレスリリース配信サービス「PR TIMES」等を運営する株式会社 PR TIMESのオウンドメディアです。日々多数のプレスリリースを目にし、広報・PR担当者と密に関わっている編集部メンバーが監修、編集、執筆を担当しています。

このライターの記事一覧へ