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マガジンハウスが実践。ブランドとの接点を広げるInstagram・Threads活用|Meta social communication session

マガジンハウスが実践。ブランドとの接点を広げるInstagram・Threads活用|Meta social communication session

「Meta social communication session」の第二部では、株式会社マガジンハウスから、『BRUTUS』編集部の村田竜平さん、『GINZA』編集部の渡邉琴友さん、両メディアを横断してデジタル戦略に携わる高柳晋祐さんがゲストとして登壇しました。

『anan』『BRUTUS』『GINZA』『POPEYE』など、さまざまなメディアブランドを展開する同社。メディアごとに読者層や世界観が異なる中で、SNSを通じた生活者とのコミュニケーションをどのように捉え、実践しているのでしょうか。第一部で登壇したMeta日本法人 Facebook Japan合同会社・市村さんがモデレーターを務め、マガジンハウス社におけるSNSの位置づけや戦略への落とし込み方などを伺いました。本記事では、当日の内容をもとにレポートします。

村田 竜平のプロフィール画像

株式会社マガジンハウス BRUTUS Digital Producer

村田 竜平(Murata Ryuhei)

2014年マガジンハウス入社。Tarzan編集部で雑誌編集に携わった後、2018年10月ローンチの「Tarzan Web」にコンテンツディレクターとして参加。2024年12月にBRUTUS編集部に異動。同年よりBRUTUSのデジタルプロデューサーを務める。

渡邉 琴友のプロフィール画像

株式会社マガジンハウス GINZA Associate Web Director

渡邉 琴友(Watanabe Kotoyu)

広告制作会社にてWebディレクターとしてキャリアをスタートし、企業サイトの制作・運用に従事。2023年よりマガジンハウス GINZA編集部に参画し、Webサイト「ginzamag.com」のディレクションを担当。データに基づくコンテンツ改善やWeb広告運用を通じて、メディアグロースに携わる。

高柳 晋祐のプロフィール画像

株式会社マガジンハウス BRUTUS/GINZA Digital Growth Director

高柳 晋祐(Takayanagi Shinsuke)

Web制作会社のデザイナーを経て、宝島社でデジタルマーケティングディレクターを歴任。コンデナスト・ジャパンでは『GQ』『WIRED』のWebプロデューサーとして、メディア成長と広告運用を牽引。2017年よりマガジンハウスにて『BRUTUS』『GINZA』『コロカル』等、主要媒体のデジタル戦略・プロデュースに従事する。

「Webサイトへの送客」から「ブランド接点」へ

──マガジンハウスさんは多くのメディアブランドを展開されていますが、各メディアによってSNS運用の目的や活用方法が異なるそうですね。

高柳さん(以下、敬称略):そうなんです。現在、マガジンハウスには10の定期刊行物に紐づくデジタルメディアと、2つのデジタルメディアの合計12メディアがあり、それぞれに読者層やブランドの属性が異なります。そのため、全社でひとつのSNSを運用するのではなく、各メディアがそれぞれの目的に合わせて最適なSNSを活用しています。

また、注力するプラットフォームも時代やユーザーの変化に合わせて変わってきました。以前は、FacebookやXなどで積極的に情報を発信しているメディアもありましたが、現在はInstagramを中心にThreadsやTikTokといった新しいものも選択肢に入れています。

各メディアの読者が何を使っていて、どのようなコミュニケーションを求めているのか。その変化に合わせて注力するSNSや発信のあり方を柔軟に変化させています。

──現在特に伸びているブランドアカウントはありますか。

高柳:今、特に伸びているのは、女性誌の『anan』と男性ファッション誌の『POPEYE』です。『anan』は2年前までは、雑誌に関する情報発信、デジタルメディアに関する情報発信、イベントに関する情報発信というように、用途ごとに複数のアカウントを運用していました。

しかし、運用リソースが分散したり、それぞれの目的がばらばらになったりと課題があったため、注力するアカウントをひとつに絞る体制にしたんです。その結果、雑誌とデジタルの相互作用もよい方向に動き出しました。

『POPEYE』の場合は、もともとマガジンハウスが運用するInstagramの中では一番大きいアカウントでした。フォロワーの半分がアメリカやイギリス、韓国、台湾をはじめとする海外だった点に着目し、英語翻訳付きの投稿に力を入れて、一層拡充しています。結果的に2アカウントともにフォロワー増に繋がっています。特にananに関しては成長率は社内で一番です。

──企業がSNSを運用する際、ゴール設定やKPIをどうすべきか悩む方も多いと思います。その点について、高柳さんはどのようにお考えでしょうか。

高柳:以前は、SNSから自社のWebサイトやメディアにどれだけトラフィックを送れるかを重視するケースが多く、実際にKPIとしても「流入数」などの数字をよく見ていました。

しかし今は、それぞれのSNSがひとつの主役になってきているため、「SNSを起点にどうブランドを成長させるか」「そこでどのようにユーザーと接点を持つか」ということが、Webサイトへの流入よりも重要だと考えています。デジタルを通じてより多くの人にリーチし、ブランドを浸透させていくことも大切です。SNSを運用するうえでは、そのような意識を編集部内で共通認識として持つように心がけています。

具体的なKPIについては、編集部ごとにフォロワー数を伸ばす、エンゲージメントを高めるなど、それぞれのメディアに合わせて設定しつつ、マガジンハウス全体としては、SNSやデジタルを活用してブランドのリーチを広げていくことを大きな方針にしています。

Meta social communication session01

メディアの世界観を表現するコンテンツ設計

──高柳さんから『anan』と『POPEYE』のお話がありましたが、『BRUTUS』もInstagramアカウントが伸びているそうですね。どのような運用をされているのでしょうか。

村田さん(以下、敬称略):『BRUTUS』のInstagramは、直近1年間で約7万人フォロワーが増えていて、現在も伸び続けています。

『BRUTUS』はもともと雑誌から始まったブランドですが、Webメディアを立ち上げる際に、まず部内で「BRUTUSとはどういうブランドなのか」を明確に定義しました。そのうえで、Webメディアでは何を表現できるのか、何をどのように発信し、どうマネタイズしていくのかを考えたんです。

それはInstagramでも同じで、各プラットフォームでどのような内容を発信するのか、何を目的に運用するのかを一つひとつ明文化し、具体的な運用に落とし込んでいます。SNSの運用は、どうしてもクリエイティブを作ることに追われがちですが、「そもそもなぜInstagramをやっているのか」という部分に定期的に立ち返るよう心がけています。

──どのような目的や役割を設定しているのでしょうか。

村田:『BRUTUS』のInstagramの目的は大きく3つあります。

1つ目は、『BRUTUS』というブランドそのものの認知拡大です。雑誌の発行部数や、雑誌が生活者の目に触れる機会は、サブスクリプションサービスやさまざまなコンテンツが増える中で変化しています。そうした中で、特に若い世代に向けて、どう『BRUTUS』というブランドを知ってもらうかは常に意識しているポイントです。新しい読者との接点は常に開拓し続けていくべきだと思うので、まずブランドを知ってもらうことを重要な目的のひとつにしています。

2つ目は、メディアサイト「BRUTUS.jp」への誘導です。メディアサイトは、デザインも含めて私たちが表現したい世界観をより深く届けることができるため、Instagramをきっかけにサイトにも来ていただきたいと考えています。

3つ目は、雑誌の宣伝です。私たちは出版社なので、やはり雑誌という商材があります。ただ、あまり宣伝色が強すぎるとブランドの見え方にも影響するので、そのバランスはとても大切で、雑誌を買っていただくための情報発信でありながら、『BRUTUS』という看板そのものの認知にもつながるように設計しています。

──目的によって、投稿内容やフォーマットも変えているのでしょうか。

村田:はい、そこはかなり意識している部分です。例えば、若い世代にブランドを知ってもらうことが目的であれば、リール動画を中心に考えますし、メディアサイトに来てもらうことが目的であれば、ストーリーズを優先して設計します。

一方で、雑誌の宣伝であれば、動画を使うこともありますし、スチール写真の投稿も多く活用しています。目的に応じて、リール、ストーリーズ、フィード投稿などを使い分けながら運用していますね。

──『BRUTUS』は号ごとに扱うテーマが大きく変わりますが、SNSで発信する際、特定のテーマに興味を持つ人だけでなく、ブランドそのものに共感してもらうために意識していることはありますか。

村田:例えば、現在発売している号は「居住空間学」という住まいに関する特集ですが、その前はフェラーリ特集、その前はラーメン特集でした。これだけテーマが変わると、ラーメンが好きな人、フェラーリが好きな人、住まいやインテリアに興味がある人など、特定のジャンルに関心がある人だけにフォローしてもらうのは難しい部分があります。

そういった中で軸にしているのは、あくまでも『BRUTUS』が発信する世界観やブランドそのものに共感していただくことです。もちろん、コンテンツが広く拡散されることでリーチを獲得することも大切です。ただ、コンテンツの質や「BRUTUSらしさ」をきちんと保ちながら、「BRUTUSが発信するものだから見たい」と思っていただける世界観をつくる。そのバランスを常に意識しています

Meta social communication session02

反響を生むのは、作り込みすぎない余白とブランドらしさ

──次に、『GINZA』についてもお聞きしたいと思います。『GINZA』では、SNS運用においてどのようなことを意識されていますか。

渡邉さん(以下、敬称略):『GINZA』では、画像をメインにブランドのビジュアルや世界観を伝えやすいInstagramに注力しています。一方でXやFacebookではインタビュー記事が伸びやすい傾向があるので、内容に応じて使い分けていますね。

KPIとしては、メインにフォロワー数の増加を置いていますが、先ほど話に挙がったように、フォロワー数の増加だけを軸にすると、『GINZA』の世界観が崩れてしまうことにもつながりかねません。そのため、既存のフォロワーに離れずに見続けてもらうことも大切にしながら、サブKPIとして「いいね数」や「保存数」も見るようにしています。フォロワー数を伸ばすことと、メディアブランドの世界観を守ることの両軸で運用しているところです。

──ここからは、反響が大きかった投稿について見ていきたいと思います。まず村田さん、『BRUTUS』のInstagramの投稿では、どのようなコンテンツに手応えがありましたか。

村田:ひとつは、「ラーメン特集」の際に制作したリール動画ですね。空気階段の鈴木もぐらさんにラーメンを食べていただいているという非常にシンプルな内容の動画ですが、かなり反響がありました。

リールというと、制作のハードルが高いイメージを持たれる方も多いと思いますが、この動画はWebチームのスタッフがスマートフォンで撮影し、スマートフォンで編集しています。リソースが足りないからそうしているわけではありません。リールに関してはラフでチャーミングな投稿のほうが、エンゲージメントが高くなることもあるため、ブランディングを壊さないラインはどこかを常に考えながら、あえてこうした制作をしているんです。

──リールでは、作り込みすぎないラフさがエンゲージメントにつながる。ポイントですね。では、複数枚の画像で見せるカルーセル投稿ではいかがでしょうか。どのようなコンテンツに反響がありましたか。

村田:カルーセル投稿で反響が大きかったのは、椅子の研究家であり、世界的な椅子のコレクターでもある織田憲嗣さんを取材した投稿ですね。

この投稿は、先ほどお話しした分類でいうとブランディングや世界観づくりを企図した投稿で、実際に公開してみるとフォロワーもかなり増えたんですよ。派手な投稿だけではなく、こうした落ち着いたトーンの内容で反応があり、フォロワーの増加にもつながるというのは、『BRUTUS』らしいものだったと思います。

──『BRUTUS』では、リールではラフさ、カルーセルではブランドの世界観が反響につながっているということでしたが、『GINZA』ではリールやカルーセル投稿をどのように活用されていますか。

渡邉:『GINZA』でも、Instagramの運用を続ける中でその手応えが見えてきたので、最近はカルーセル投稿を増やす動きもあるんです。

例えば、本誌の情報をSNS用にデザインして投稿した「バッグの中身」を紹介するカルーセル投稿は、かなり反響がありました。いいね数は平均より多い約3,000、保存数も約1,500あり、数字としても伸びた投稿です。

リールでは、俳優の臼田あさ美さんがゲストを迎えて山に登る連載企画も反響がありました。1年ほど前に始まり、現在は8回目まで継続している企画で、カメラマンが入って撮影しているわけではなく、編集部のスタッフがiPhoneとデジタルカメラを持って、実際に山を登りながら撮影しています。

YouTubeには長尺版も掲載していますが、Instagramのリールでも伸びがよく、エンゲージメントが高いのも特徴で、徐々にリーチが伸び、フォロワーの増加にもつながっています。

先ほど『BRUTUS』のリール動画の話にもあったように、編集スタッフが撮影していることで親近感が好反響の一因にもなっていると思います。

Instagramとは違う役割を設計し、Threadsで濃いファンを育てる

── Instagramを運用する企業が増えている一方で、Threadsはこれから導入を検討するというケースも多いと思います。『BRUTUS』ではThreadsをどのように活用されていますか。反響のあった投稿や、運用する中で見えてきたことがあればお聞きしたいです。

村田:Threadsに関しては、『BRUTUS』が何を発信するアカウントなのかが、まだ十分に知られていない状況だと感じています。日々試行錯誤している段階で、Xで反響の大きかった投稿をThreadsに持ってきてもあまり反応がよくなかったり、Instagramで反応がよかった投稿も同じようには伸びなかったり。やはり、プラットフォームごとにユーザーの使い方や求めているものが違うのだと思います。

東京にあるゾウの滑り台を紹介したスポット投稿や、永福町のスポットを紹介した投稿などのように、目に留まりやすい場所や、実際に行ってみたいと思える情報には反応があることがわかりました。また、編集部の声をより近い距離感で届ける投稿も手応えを感じたもののひとつです。例えば、NHK特集を担当した編集者による編集後記のような投稿は、少し長めの文章で、制作の背景や編集者の視点を伝えたのですが、比較的反応がよかったです。

今後の方向性としては、まずThreadsにおける『BRUTUS』の立ち位置を明確にしていくこと。『BRUTUS』は幅広いテーマを扱うメディアですが、Threadsではテーマを広げすぎるのではなく、グルメ、スポット、日用品など、発信の軸を絞ることも必要だと感じています。

「このアカウントはどういう情報を発信しているのか」が伝わるように運用していくことを大切に、だからこそ、読者にとってどのようなベネフィットがあるのかを意識しながら運用していきたいですね。

Threadsで見る

──『GINZA』ではいかがでしょうか。Threadsをどのように活用されていますか。

渡邉:『GINZA』では、比較的早い段階からThreadsを始めていました。当初は「どう運用すればいいんだろう」と悩み、一時期更新が止まってしまったこともありましたが、最近はThreadsを使うユーザーが増えている実感があります。

また、Threadsをほかのプラットフォームとは完全に使い分け、編集部の生の声を届ける場として位置づけて、投稿するようにしています。例えば、「GINZA的ギンザ案内」というThreads独自の連載企画を行っていて、編集部スタッフが銀座の街で気になった場所や行きつけのお店を紹介しているんです。日常を発信する連載なのですが、クライアントの方から「これ見ています」と言っていただくこともあって、手応えを感じていますね。

あと、ブランドのプレスプレビューに伺った際に撮影した投稿も反響がありました。通常はいいね数が50前後のところ、その投稿は約800いいねまで伸びたんです。Threads上での投稿が、ブランドとのタッチポイントにもつながっているのを感じています。

Threadsで見る

──「GINZA的ギンザ案内」はInstagramにも展開されているそうですね。

渡邉:そうなんです。Threadsで継続的に良い反応があったので、Instagramにも載せてみてはどうかと、昨年末からカルーセルにたくさん画像をまとめて投稿してみました。

結果的にエンゲージメントはよかったものの、Threadsのフォロワーがすごく増えたかというとそれほどでもありませんでした。ただ、InstagramとThreadsを掛け合わせることで濃いファンを少しずつ増やすフックにはなると感じています。

──各メディアの個性に合わせて、SNSの役割や発信のあり方を設計されていることがよくわかりました。最後に、今後チャレンジしてみたいことをお聞かせください。

高柳:私は複数のメディアを横断して見ている立場でもあるので、マガジンハウスのメディアそれぞれの個性を活かしながら、横ぐしで取り組める企画にも挑戦してみたいです。

例えば、ひとつのコンテンツや話題に対して、各メディアがそれぞれの視点で投稿するような取り組みです。メディアごとの個性を活かしつつ、マガジンハウス全体として広がりをつくれるようなSNS活用ができたらいいなと思っています。

村田:『BRUTUS』では、動画により力を入れていきたいと考えています。リールやYouTubeもそうですが、つい先日も企業さんとご一緒して、20分弱のショートムービーのような映像作品を公開しました。

SNS上の短い動画だけでなく、もう少し深く世界観を伝えられる映像コンテンツにも可能性を感じています。今後も動画を通じて、新しい表現に挑戦していきたいですね。

渡邉:Threadsは、投稿はしているものの、まだ「会話を生み出す」というところまでは十分にできていません。せっかくThreadsというInstagramとは異なる「つながりの場」があるので、読者の方との会話が生まれるような取り組みができたら面白いと思っています。投稿するだけではなく、そこからコミュニケーションが広がるような使い方にチャレンジしてみたいですね。

Meta social communication session03

まとめ:届けたい相手を明確にし、SNS運用の目的を設計しよう

企業がSNSを運用する際には、フォロワー数やエンゲージメントといった数値を追うだけでなく、「そのSNSを通じて、誰に何を届けたいのか」を明確に設計することが重要です。

マガジンハウスの各メディアの事例からは、InstagramやThreadsといったプラットフォームごとの特性を見極めながら、ブランドの世界観や読者との距離感に合わせて発信を工夫していることがわかりました。『BRUTUS』のように、リールでは作り込みすぎないラフさを活かしながらもブランドらしさを保つこと。『GINZA』のように、カルーセルやThreadsを通じて編集部の視点や親近感を届けること。いずれも、単なる情報発信ではなく、生活者との関係性を育てるためのSNS活用といえるでしょう。

SNSは、Webサイトへの送客手段にとどまらず、ブランドそのものを知ってもらい、好きになってもらうための大切な接点になっています。マガジンハウスの世界観を軸にした発信設計を参考に、自社のブランドらしさや生活者にとってのベネフィットを見つめ直しながら、SNS運用の目的や発信内容を設計してみてはいかがでしょうか。

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