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店舗ブランディングとは?価格競争に頼らず「選ばれる店」になる進め方・成功事例を解説

店舗ブランディングとは?価格競争に頼らず「選ばれる店」になる進め方・成功事例を解説
この記事でわかること
店舗ブランディングとは、自店ならではの価値を明確にし、商品や接客、店舗空間、情報発信などで一貫して伝える取り組みです。本記事では、店舗ブランディングの基本や期待できる効果、うまくいかない原因、店内外で実践できる施策、5つの進め方、成功事例まで解説します。

「SNSを更新し、キャンペーンも実施しているのに、他店との違いがうまく伝わらない」「値引きをすると来店は増えるものの、価格以外で選ばれている実感がない」「店舗の広報PRを任されたものの、何から手をつければよいのかわからない」という担当者もいるのではないでしょうか。

こうしたときに必要なのは、施策を増やすことではなく、自店が誰にどのような価値を提供する店なのかを明確にすることです。その軸が定まれば、WebサイトやSNS、プレスリリースなどの情報発信だけでなく、商品、接客、店舗空間まで同じ方向で考えやすくなります。

本記事では、店舗ブランディングの基本や期待できる効果、うまくいかない原因を押さえたうえで、店外への発信と店内での体験、具体的な進め方、成功事例まで解説します。

目次
  1. 店舗ブランディングとは

  2. 店舗ブランディングに取り組む5つの効果

  3. 店舗ブランディングがうまくいかない主な原因

  4. 店舗の魅力を「外」に届けるブランディング施策

  5. 店舗の「中」で体験をつくるブランディング施策

  6. 店舗ブランディングの進め方5ステップ

  7. 店舗ブランディングでよくある失敗パターンと対策

  8. 店舗ブランディングを成功させる4つのポイント

  9. 店舗ブランディングの成功事例3選

  10. まとめ:店舗の価値を定め、発信と店舗体験を一貫させるブランディングを

店舗ブランディングとは

店舗ブランディングは、集客や販促の一施策ではなく、店舗全体の価値や方向性を整える考え方です。まずはその役割を押さえたうえで、店舗を取り巻く環境の変化から、必要とされる背景を確認します。

店舗ブランディングとは、自店ならではの価値を一貫して伝える取り組み

店舗ブランディングとは、自店の強みやこだわり、提供したい価値を明確にし、商品・サービス、接客、店舗空間、WebサイトやSNSなど複数の顧客接点で一貫して伝える取り組みです。

ロゴや看板、内装など、見た目を統一することだけを指すものではありません。顧客が店舗を知り、情報を調べ、来店して商品やサービスを利用するまで、それぞれの接点から受ける印象に大きなずれがなく、自店らしさが伝わる状態をつくります。

広報PR担当者は、経営者や店舗スタッフへのヒアリングから、自店が大切にしていることや顧客に提供したい価値を確認します。その内容がWebサイトやSNSだけでなく、商品、接客、店舗空間にも表れているかを見ることで、発信と実態のずれを把握できます。

集客・販促との違いは、店舗としての価値や方向性を定めること

集客は店舗を知ってもらい、来店を促す取り組みです。販促(販売促進)は、商品やサービスの購入を後押しする活動を指します。店舗ブランディングは、その前提となる、どのような価値を提供する店なのかという方向性を定める役割を持ちます。

例えば、SNSで新商品を知らせたり、クーポンを配布したりする場合も、何を魅力として伝えるかは店舗ごとに異なります。専門性を伝えるのか、商品の背景や地域との関わりを伝えるのかによって、発信内容だけでなく商品や接客のあり方も変わります。

店舗としての価値が明確であれば、商品、接客、店舗空間、情報発信を考える際に、共通の基準で判断しやすくなります。

同業態の店舗が増え、商品や価格だけでは違いが伝わりにくくなっている

似た商品やサービス、価格帯の店舗が複数あると、何を販売しているか、いくらで提供しているかだけでは、顧客から見た違いがわかりにくくなります。

店舗ごとの特徴は、商品そのものだけに表れるものではありません。素材や仕入れ先の選び方、製法、商品を提供する背景、接客で大切にしていることなどにも違いがあります。飲食店であれば、同じ料理を扱っていても、使用する食材や調理方法、どのような時間を過ごしてほしいと考えているかによって、店舗ごとの違いが表れます。

商品や価格に加え、その店が何を大切にし、どのような価値を提供しているのかまで伝えることが、他店との違いを明確にするうえで欠かせません。

口コミやSNSの普及で、来店前に比較できる情報が増えている

顧客は来店前から、Googleの口コミ、SNSの投稿、公式Webサイトなどを使って店舗を比較できます。営業時間や価格、メニューだけでなく、店内の雰囲気、商品の見た目、スタッフの対応、実際に利用した人の感想まで確認できるようになりました。

そのため、店舗側が公式に発信した情報だけで印象が決まるわけではありません。利用者が投稿した写真や口コミも加わり、来店する前から店舗に対するイメージが形づくられます。

WebサイトやSNSで伝えている店舗像と、口コミや利用者の投稿から受ける印象が大きく異なれば、店舗が意図する価値は伝わりにくくなります。公式発信だけでなく、第三者からどのように見えているかも確認する視点が必要です。

値引き競争だけでは、店舗経営を続けにくい

値引きやクーポンは、来店や購入を促す方法のひとつです。一方で、価格だけが店舗を比較する基準になると、競合店がより低い価格を提示した場合にも、価格で比較されやすい状態が続きます。

また、値下げを重ねれば、商品やサービス一件あたりから得られる利益も小さくなります。価格以外の理由でも選ばれるためには、素材の選び方や製法、専門性、接客、店舗の考え方など、自店ならではの価値を明確にすることが必要です。

人手不足のなか、顧客だけでなく求職者にも店舗の特徴を伝える必要がある

人材を確保しにくい状況では、店舗は顧客だけでなく、働く場所を探している人に対しても、自店の特徴や考え方をわかりやすく伝える必要があります。求人情報に給与や勤務地、勤務時間などの条件を載せるだけでは、実際にどのような店舗で、どのような働き方が求められるのかまでは伝わりません。

求職者にとっては、店舗がどのような接客を大切にしているのか、どのような商品やサービスを提供しているのか、スタッフにどのような姿勢を求めているのかも、職場を検討する際の判断材料です。

店舗の価値や方向性を明確にしておけば、採用情報でも仕事内容や条件だけでなく、店として大切にしていることまで伝えられます。人材を確保しにくい環境だからこそ、求職者が自分に合う職場かどうかを判断できる情報を整えておくことが重要です。

伝える

店舗ブランディングに取り組む5つの効果

店舗ブランディングによって期待される変化には、価格以外での選ばれ方や再来店、口コミ・紹介、情報発信、採用・スタッフ間の共有などがあります。店舗経営や現場のどのような課題と関係するのか、5つの観点から見ていきます。

効果1.価格以外の理由でも選ばれやすくなる

店舗独自の商品やサービス、提供する背景やこだわりが伝わると、顧客は価格だけでなく、その店ならではの特徴も含めて比較できます。

例えば、同じ価格帯の商品を扱っていても、素材や仕入れ先の選び方、製法、専門性、接客方針などに違いがあれば、店舗を選ぶ際の判断材料が増えます。価格だけでは見えにくい「なぜこの商品を提供しているのか」「どこにこだわっているのか」まで伝えることで、他店との違いも明確になります。

商品そのものの特徴だけでなく、開発背景や素材の選定基準なども発信できる情報として整理しておくと、自店ならではの価値を伝えやすくなります。

効果2.リピーター・ファンづくりの土台になる

来店前にWebサイトやSNSなどから受け取った印象と、実際の商品、接客、店舗空間から受ける印象が大きくずれていなければ、再び利用する店を選ぶ際の判断材料になります。

例えば、丁寧な接客を大切にしていると発信している店舗で、実際の来店時にも同じ姿勢が感じられれば、事前に抱いた店舗像と利用後の印象が一致します。反対に、発信では落ち着いた雰囲気を伝えているのに、実際の店舗から大きく異なる印象を受ければ、期待とのずれが生じます。

WebサイトやSNSだけでなく、商品、接客、空間まで同じ価値が伝わる状態を保つことが、継続して利用する店舗を判断する要素のひとつです。

効果3.口コミ・紹介が生まれるきっかけになる

店舗の特徴が明確であれば、利用した顧客が家族や知人へ紹介するときにも、どのような店なのかを具体的に説明しやすくなります。

「雰囲気がよい店」といった曖昧な感想だけでなく、「地元の食材を使っている」「特定分野に詳しいスタッフがいる」「子ども連れでも利用しやすい」など、店舗ならではの特徴が伝わっていれば、紹介する相手に合わせてその特徴を説明できます。

口コミや紹介を増やすこと自体を目的にするのではなく、商品、接客、店舗空間などを通じて、顧客自身が「この店はこういう店」と説明できる状態をつくることが前提です。

効果4.メディア・SNSで取り上げられるきっかけをつくりやすくなる

店舗の特徴や大切にしている考え方が言語化されていると、日々の取り組みの中から外部へ伝えられる情報を見つけやすくなります。

新商品や新メニュー、周年、地域との取り組み、独自の仕入れや製法なども、「なぜ取り組むのか」「自店のどのような価値と関係するのか」まで整理されていれば、背景を伴う情報として伝えられます。

広報PR担当者にとっても、SNSで発信する内容や、メディアへ提供する情報を選ぶ際の判断材料になります。日々の出来事の中から、自店の価値と結び付く情報を選びやすくなる点も、店舗ブランディングに取り組む効果のひとつです。

効果5.採用力やスタッフ間の価値観共有に活用できる

店舗が大切にする価値や接客方針が明確であれば、求職者やスタッフにも、どのような店を目指しているのかを伝えやすくなります。

採用時には、仕事内容や給与、勤務時間などの条件に加えて、店舗が大切にしている考え方や求める接客姿勢も伝えられます。求職者にとっては、自分の考え方や希望する働き方と合うかを検討するための情報です。

入社後も、接客や商品説明、顧客対応で迷った際に、店舗として何を大切にするのかを共通の判断基準として使えます。店舗の価値を顧客向けの発信だけで終わらせず、採用情報やスタッフ間でも共有しておくことで、採用時から入社後まで一貫した考え方を伝えられます。

店舗ブランディングがうまくいかない主な原因

店舗の軸や届けたい相手が曖昧なまま施策を急ぐと、商品、接客、店舗空間、情報発信の判断基準がそろわず、店舗として一貫した価値を伝えにくくなります。着手前や初期段階で起こりやすい4つの原因から、なぜ店舗の価値が伝わりにくくなるのかを見ていきます。

原因1.コンセプトが言語化されておらず、店舗や人によって発信がぶれる

店舗の強みや提供したい価値が共通の言葉になっていないと、経営者、店長、スタッフ、広報担当者ごとに判断や説明が変わります。

判断の拠り所がない状態では、経営者は「品質の高さ」を強みとして伝えたい一方で、店頭ではお得感を前面に出し、SNSでは写真映えを重視した投稿を中心にするなど、発信内容にぶれが生じます。

商品説明、接客、店舗空間、Webサイトなどで受ける印象がそろわず、顧客から見て何を大切にしている店なのかがわかりにくくなります。

広報PR担当者にとっても、どの情報を優先して伝えるのか、どの切り口を選ぶのかという判断の軸が定まりません。

原因2.届けたい顧客が曖昧で、特徴が伝わらない

幅広い人に利用してほしいという考えだけでは、商品やサービス、接客、情報発信を決める基準が曖昧になります。

例えば、家族連れ、近隣で働く人、観光客をすべて同じように意識すると、どのような利用場面やニーズを優先するのか判断しにくくなります。その結果、幅広い人に当てはまる情報が中心になり、自店がどのような人にどのような価値を提供する店舗なのかが見えにくくなります。

広報PRでも、届けたい相手が定まっていなければ、SNSで何を発信するか、メディアへどのような情報を提供するかを選ぶ基準が曖昧なままです。

原因3.施策の目的を決めないままSNSなどの手段から考えている

店舗の価値や届けたい相手を整理する前に、Instagramを始める、キャンペーンを実施する、プレスリリースを配信するといった手段から考えると、施策ごとに目的や伝える内容がばらつきます。

例えば、SNSでは新商品、Webサイトでは店舗の歴史、プレスリリースでは価格の安さを中心に伝えていても、それぞれが同じ店舗の価値に基づいていなければ、発信全体から何を伝えたいのかが見えにくくなります。

手段そのものが問題なのではなく、何のために使うのかを決めないまま運用することが、施策同士を分断させる原因です。

原因4.発信内容と実際の店舗体験が一致していない

SNSやWebサイトで伝えている店舗像と、実際の商品、接客、店舗空間から受ける印象が異なると、来店前に抱いた期待との間にずれが生じます。

例えば、丁寧な接客や落ち着いた時間を過ごせる店舗として発信していても、スタッフによって対応が大きく異なったり、実際の店内が発信から受ける印象と合っていなかったりすれば、顧客が受け取る店舗像は一貫しません。

発信で伝えている価値が、商品や接客、空間にも表れていることが、店舗ブランディングの前提です。

店舗の魅力を「外」に届けるブランディング施策

店舗の価値を定めた後は、それを来店前の人や地域、メディアへ伝えていきます。来店前に伝えた価値を実際の店舗でも感じてもらうという流れを意識しながら、プレスリリース、SNS、Googleビジネスプロフィール、公式サイト、地域との取り組みを使い分けます。

プレスリリース配信:店舗の取り組みをメディアへ届ける

プレスリリースは、新店舗の開業や新商品の発売など、大きな出来事だけを知らせるものではありません。新メニュー、リニューアル、周年、地域や他店とのコラボレーション、独自の仕入れや製法なども題材になります。

「小さな店舗だからニュースになることはない」と決めつけず、日常の取り組みに目を向けてみましょう。例えば、地元の生産者と始めた新商品、長年続けてきた製法、地域の課題をきっかけに始めたサービスなどは、店舗の特徴や地域との関わりを伝える材料になります。

広告が店舗側から直接発信する情報であるのに対し、メディア掲載では、記者や編集者が情報を選び、取材や編集を経て紹介されます。掲載されるかどうかはメディア側の判断ですが、自社発信とは異なる形で店舗を知ってもらう機会になります。

広報PR担当者は、新しい出来事だけを探すのではなく、経営者やスタッフへのヒアリングから、仕入れの選定理由や製造工程、長く続けている工夫なども掘り起こします。そのうえで、地域性や社会との接点、生活者のどのような関心と結び付くのかを考え、メディアへ提供できる情報として整理します。

SNS運用:店舗の日常や価値観を継続して伝える

InstagramやXなどのSNSでは、新商品やキャンペーンの告知だけでなく、商品の開発背景、仕入れ、製造の様子、スタッフの日常なども継続的に発信できます。完成した商品だけでは見えにくい、店舗の考え方や日々の仕事を伝えられる点も特徴です。

ただし、利用するSNSを増やすこと自体が目的ではありません。主な顧客がどのサービスを利用しているのか、自店ではどのような情報なら継続して発信できるのかを確認したうえで、運用するSNSを選びます。

例えば、写真で商品の魅力を伝えやすい店舗と、スタッフの専門知識や商品選びの考え方を文章で伝えたい店舗では、発信の仕方も変わります。店舗として伝えたい価値を軸に、日常の出来事から投稿テーマを考えます。

Googleビジネスプロフィール・口コミ対応:来店前の判断材料を整える

Google検索やGoogleマップでは、営業時間や所在地、電話番号、写真、口コミなど、来店を検討する際に必要な情報を確認できます。実際の営業内容と表示されている情報が異ならないよう、営業時間や定休日などの基本情報は最新の状態に保ちます。

写真も、外観、店内、商品、メニューなど、初めて訪れる人が店舗の様子を把握できるものを用意します。店名で検索した際に何が表示されるのかを、利用者の立場で定期的に確認しておくとよいでしょう。

口コミでは、返信の有無だけでなく、どのような点が評価され、どこに不満が寄せられているのかにも目を向けます。店舗側が強みと考えている点と、利用者が実際に感じている特徴を照らし合わせ、接客や商品、店舗運営を見直す材料として活用します。

公式サイト・オウンドメディア:店舗の情報をまとめて伝える

公式サイトは、店舗のコンセプト、商品・サービス、営業時間、アクセス、スタッフ、こだわりなどを一ヵ所で確認できる場所です。SNSの投稿は時間とともに流れていきますが、公式サイトでは店舗について知ってほしい基本情報を整理して掲載できます。

情報量を増やすだけでなく、訪れた人が必要な情報へたどり着ける構成になっているかも確認します。初めて来店を検討する人には、営業時間や場所、商品・サービスの内容、価格などが必要です。取材を検討するメディア関係者には、店舗の特徴や運営者情報、問い合わせ先などが求められます。

広報PR担当者は、掲載内容が古くなっていないかに加え、自店らしさを説明する情報や、外部から問い合わせる際に必要な情報が不足していないかも定期的に見直します。

地域イベント・他店とのコラボレーション:地域との接点を広げる

地域イベントへの参加や、近隣店舗・企業との共同企画は、通常の店舗運営だけでは接点を持ちにくい人に自店を知ってもらう機会になります。

例えば、地域の食材を扱う飲食店が生産者とイベントを開く、異なる業種の店舗同士で共同企画を行うなど、自店の特徴と相手の強みを組み合わせる方法があります。

参加すること自体を目的にせず、自店の商品や強みが地域や相手とどのように関係するのかを整理し、店舗らしさが伝わる企画にします。

店外で店舗の魅力を伝えても、実際に訪れたときの商品や接客、空間から異なる印象を受ければ、店舗として伝えたい価値にずれが生じます。外への発信とあわせて、店内で顧客が触れる要素も整えることが必要です。

店舗の「中」で体験をつくるブランディング施策

店舗の中では、空間、接客、商品、店内ツール、BGMや香りなど、顧客が実際に触れる要素から店舗の価値を伝えます。店外で伝えた印象と実際の体験が離れないよう、それぞれの接点をコンセプトに沿って整えます。

空間デザイン:内外装や什器で店舗のコンセプトを伝える

外観、内装、照明、什器などは、来店した人が店舗の特徴を感じる要素のひとつです。見た目を整えるだけでなく、どのような顧客に、どのような時間を過ごしてほしいのかという店舗の考え方と合っているかを確認します。

例えば、ゆっくり商品を選んでほしい店舗と、短時間で利用しやすいことを重視する店舗では、通路の取り方や商品の見せ方も変わります。流行のデザインをそのまま取り入れるのではなく、自店のコンセプトとのつながりから判断します。

大規模な改装が難しい既存店でも、什器やテーブルの配置、掲示物、照明、入口周辺の見せ方など、変更できる部分から見直せます。

接客・スタッフの立ち居振る舞い:ブランドの価値を人から伝える

顧客が店舗から受ける印象は、スタッフの挨拶や言葉遣い、商品説明、問い合わせへの対応などにも左右されます。店舗のコンセプトを掲げるだけでなく、それが日々の接客でどのような行動になるのかまで共有しておく必要があります。

気軽に相談できることを大切にする店舗であれば、声をかけるタイミングや商品説明の仕方にも、その考え方が表れます。専門性を強みとする店舗では、スタッフが商品の特徴や選び方を説明できることも、店舗らしさを伝える要素です。

形式的な接客方法だけをそろえるのではなく、「なぜこの対応をするのか」までスタッフ間で共有し、店舗が大切にする価値を日々の行動に反映させます。

商品・メニュー・パッケージ:店舗らしさを商品に反映する

商品やメニューは、店舗が提供する価値を顧客が直接受け取る接点です。品ぞろえや素材、名称、価格だけでなく、盛り付け、食器、包装、提供方法なども含めて、店舗のコンセプトと合っているかを確認します。

例えば、素材へのこだわりを強みとする店舗であれば、その特徴が商品名やメニュー説明、パッケージからも伝わるかを見ます。専門性を掲げていても、商品説明から違いがわからなければ、その価値は店頭で伝わりにくくなります。

すべての商品を特徴的にする必要はありません。顧客に何を覚えてほしいのかを決め、看板商品や象徴的なメニューなど、店舗の価値が伝わる部分を明確にします。

店内POP・ショップカード:店舗の背景やこだわりを補足する

スタッフがすべての顧客へ直接説明できない情報は、店内POP、ショップカード、リーフレットなどで補えます。

価格や商品の特徴だけでなく、使用している素材の産地、製法、開発の背景、つくり手の考えなども、商品を選ぶ際の判断材料として伝えられます。

情報を詰め込みすぎず、その場で何を知ってほしいのかに合わせてツールを使い分けます。店頭POPは商品選びを補う情報、ショップカードは店舗の基本情報や背景を持ち帰って読める内容にするなど、それぞれの役割を分けて考えます。

BGM・香りなど五感の演出:空間全体の印象を整える

店舗で受ける印象は、内装や商品など目に見えるものだけで決まるわけではありません。BGMの音量や選曲、香りなども、店内で過ごす時間の感じ方に関わります。

例えば、落ち着いて過ごしてほしい店舗と、活気のある雰囲気を出したい店舗では、適した音楽や音量も異なります。香りを取り入れる場合は、商品や飲食物の香りを妨げないかなど、店舗の特徴との相性にも配慮します。

BGMや香りだけを目立たせるのではなく、商品、接客、空間と組み合わせたときに違和感がないかを確かめます。顧客にどのような時間を過ごしてほしいのかを基準に、店内全体の印象をそろえていきます。

店舗ブランディングの進め方5ステップ

店舗ブランディングは、思いついた施策から始めるのではなく、現状を把握し、顧客とブランドの軸を定めてから実行へ移します。各STEPで何を確認し、何を決めれば次へ進めるのかを明確にしながら、順番に進めていきましょう。

ステップ

STEP1.現状分析:自店の強み・顧客・競合を把握する

まずは、現在の店舗がどのような状態にあるのかを把握します。売上や利用状況、既存顧客の特徴、口コミ、問い合わせ内容などを確認し、どの商品やサービスが選ばれているのか、顧客からどのような点を評価されているのかを整理します。

あわせて、近隣や同業態の競合店舗について、商品・サービス、価格帯、立地、発信内容などを確認します。自店と競合の違いを並べて見ることで、強みや不足している点を整理する材料になります。

経営者や店長の感覚だけで判断せず、常連客へのヒアリングや接客時に寄せられる声、スタッフが感じている顧客の反応も材料にします。「なぜ利用してくれているのか」「何が来店の決め手になったのか」を確認し、自店の強み、現在の主な顧客、競合との違いが明確になれば、次のSTEPへ進めます。

STEP2.届けたい顧客像を具体化する

現状分析をもとに、自店の価値を特に届けたい顧客を具体化します。すべての人を対象にするのではなく、どのような人に選ばれたいのかを明確にします。

年代や性別、居住地といった属性だけでなく、「どの時間帯に、誰と利用するのか」「どのような目的で来店するのか」「店を選ぶ際に何を重視するのか」といった利用場面や行動まで考えます。

架空の人物像を細かくつくり込むことが目的ではありません。既存顧客や商圏の実態とかけ離れない範囲で、商品、接客、情報発信について迷ったときに、設定した顧客像に合っているかを判断できるところまで具体化します。

STEP3.ブランドコンセプトを言語化する

現状分析と設定した顧客像をもとに、店舗として誰に、どのような価値を、どのように提供するのかを言葉にします。

ブランドコンセプトは、印象的なキャッチコピーをつくることが目的ではありません。例えば、「地域の食材を使う店」という特徴だけで終わらせず、誰にどのような価値を届けるために、その食材を選んでいるのかまで掘り下げます。

言語化したコンセプトは、商品を増やすか、どのような接客をするか、どの情報を発信するかを判断する基準として使います。経営者だけが理解できる表現ではなく、スタッフにも同じ意味で伝わり、日々の業務に照らして判断できる言葉にします。

STEP4.店舗体験と情報発信へ落とし込む

ブランドコンセプトを定めたら、現在の店舗と照らし合わせ、どの顧客接点から見直すかを決めます。

店外では公式サイト、SNS、Googleビジネスプロフィール、プレスリリースなど、店内では商品、接客、店舗空間、POPなどを確認します。すべてを一度に変えるのではなく、コンセプトとのずれが大きい部分や、店舗の印象に影響しやすい箇所から優先順位をつけます。

例えば、「専門家に相談できる店」を掲げるのであれば、SNSで専門知識を発信するだけでなく、店頭でもスタッフが商品の違いや選び方を説明できる状態が必要です。発信と実際の店舗体験にずれがないかを確認します。

実行する施策が決まったら、予算や人員も踏まえ、担当者、実施時期、必要な準備まで具体化します。誰が、いつ、何を行うのかを決め、実行に移せる形まで落とし込みます。

STEP5.効果を測定し、施策を改善する

施策を実行した後は、目的に対してどのような変化があったのかを確かめます。そのため、実施前の段階で、何を見て効果を判断するのかを決めておきます。

確認する指標は施策の目的によって異なります。来店を増やす施策であれば来店数や問い合わせ、再利用を促す施策であれば再来店の状況、広報PRであればメディア掲載や指名検索など、目的に対応する項目を選びます。

数値に加え、口コミの内容、接客時の会話、スタッフから寄せられる意見なども判断材料にします。実施前後を比べ、どの施策や伝え方に改善の余地があるのかを確認し、優先順位をつけて必要な箇所から調整していきましょう。

店舗ブランディングでよくある失敗パターンと対策

店舗ブランディングは、方針を決めた後も、運用の仕方によって自店らしさが薄れたり、現場との認識にずれが生じたり、発信が一時的で終わったりすることがあります。運用・継続の段階で起こりやすい3つの失敗と、その防ぎ方を見ていきます。

失敗パターン1.流行のデザイン・施策を真似て自店らしさを失う

人気店の内外装やSNSの見せ方、話題になった施策をそのまま取り入れても、自店のコンセプトや顧客像に合っているとは限りません。見た目や手法だけを真似すると、その施策を採用する理由が店舗の価値と結び付かず、自店ならではの特徴が伝わりにくくなります。

例えば、落ち着いて商品を選べることを大切にしている店舗が、流行しているという理由だけでにぎやかな装飾や投稿表現を取り入れれば、これまで伝えてきた店舗像との間にずれが生じます。

他店の事例を見るときは、「何を取り入れたか」だけでなく、「どのような課題に対して、なぜその方法を選んだのか」まで確認します。その背景を踏まえ、自店のコンセプトや顧客像に合う部分だけを取り入れます。

失敗パターン2.経営者だけで進めて現場に浸透しない

経営者や担当者だけでブランドの方針を決め、完成した内容をスタッフへ伝えるだけでは、日々の業務でどのように実践すればよいのかまで共有されないことがあります。

例えば、「親しみやすい店にする」という方針だけを伝えても、声をかけるタイミングや商品説明、問い合わせへの対応など、具体的な行動までは判断できません。スタッフごとに受け取り方が異なれば、接客や商品説明にもばらつきが生じます。

方針を共有する際は、店舗が大切にする価値と実際の業務を結び付けます。店長やスタッフから、接客で判断に迷う場面や顧客の反応を聞き、行動例や判断基準をすり合わせる機会を設けます。

失敗パターン3.リニューアルなど一時的な施策で終わり、その後の発信が続かない

リニューアルや新規オープンの前後は積極的に情報を発信していても、その後更新が止まれば、店舗の日々の取り組みや変化を伝える機会が少なくなります。発信が特定のイベント時だけの業務になっていると、通常営業に戻った後に後回しになりやすくなります。

新商品や季節のメニュー、周年、地域との企画、スタッフの取り組みなど、通常の営業の中にも発信できる材料があります。年間で予定している出来事をあらかじめ一覧にし、誰が情報を集め、いつ発信するのかを決めておきます。

広報カレンダーなどを使って発信予定を見える形にし、情報収集と発信を通常業務の中に組み込んでおくと、継続的に運用しやすくなります。

店舗ブランディングを成功させる4つのポイント

店舗ブランディングを継続するには、WebサイトやSNS、店舗空間、接客など複数の顧客接点で伝える内容をそろえ、スタッフが日々の業務で判断できる形で店舗の価値を共有することが大切です。短期的な結果だけで方向性を変えず、顧客の声も確認しながら、ブランドの受け取られ方を見直します。

ポイント

ポイント1.顧客接点を定期的に確認し、伝え方のずれを防ぐ

公式Webサイト、SNS、プレスリリース、外観、商品、接客などは、更新する担当者や時期が異なるため、運用を続けるうちに伝える内容や店舗から受ける印象にずれが生じることがあります。

例えば、Webサイトでは専門性を強みとして伝えているのに、SNSでは割引情報が中心になり、店頭でも専門性を伝える説明がほとんどない状態では、顧客が受け取る店舗像がそろいません。

定期的に各顧客接点を並べ、現在のブランドコンセプトと異なる表現や、店外の発信と店舗体験の間にずれがないかを確認します。担当者ごとに個別で見るのではなく、店舗全体をひとつの流れとして点検します。

ポイント2.スタッフが日々の判断に使える形でブランドを共有する

ブランドコンセプトを掲示したり、一度説明したりするだけでは、日々の接客や顧客対応でどのように判断すればよいのかまでは伝わりません。店舗が大切にする価値を、実際の業務場面と結び付けて共有します。

例えば、「ゆっくり過ごせる店」を目指すのであれば、混雑時の声かけや片付け、商品説明のタイミングなど、顧客との接点でどのように振る舞うかまで具体化します。抽象的な言葉を、現場で使える判断基準へ落とし込むことが必要です。

スタッフが対応に迷った事例や、顧客から寄せられた声も共有しながら、「この店舗らしい対応とは何か」を話し合える状態にしておくと、日々の判断にもブランドコンセプトを反映しやすくなります。

ポイント3.短期的な結果だけでブランドの方向性を変えない

店舗ブランディングは、商品や接客、情報発信など複数の接点を通じて、店舗として伝えたい価値を積み重ねていく取り組みです。

施策を始めて短期間で売上や来店数が増えないことだけを理由に、ブランドコンセプトや店舗の方向性まで頻繁に変更すると、発信内容や現場の判断基準もそのたびに変わります。

結果を見る際は、ブランドの軸と個々の施策を分けて考えます。コンセプトそのものを見直す前に、まず発信内容や見せ方、運用方法など、個々の施策や伝え方を見直します。

ポイント4.顧客の言葉からブランドの受け取られ方を定点観測する

口コミ、アンケート、接客時の会話、SNS上の投稿などには、顧客が店舗をどのように捉えているのかを知る手がかりがあります。単に評価の高低を見るのではなく、どのような言葉で店舗の特徴が語られているのかにも目を向けます。

例えば、店舗側は「専門性」を強みとして伝えているのに、口コミでは「価格の安さ」ばかりが挙げられている場合、意図している価値と実際に受け取られている特徴にずれがある可能性があります。反対に、自店では意識していなかった点が繰り返し評価されていれば、新たな強みとして捉え直すきっかけにもなります。

一定の間隔で顧客の言葉を見返し、店舗側が伝えたい価値と、実際に受け取られている特徴を照らし合わせます。両者のずれや変化を把握し、発信や店頭での伝え方を調整する際の判断に生かします。

店舗ブランディングの成功事例3選

店舗ブランディングでは、抱える課題や届けたい相手によって、商品、店舗、情報発信の見直し方が異なります。ここでは、ブランドの方向性を変えた事例、店舗ごとの特徴を広報PRに生かした事例、新たな顧客層に合わせて業態や発信体制を変えた事例を紹介します。

事例1.よーじや|観光客中心のブランドイメージを見直し、日常使いの店へ転換

よーじやは、「おみやげの店」というイメージが定着し、観光需要への依存が課題となっていました。コロナ禍で売上が大きく減少したこともあり、「脱・観光依存」を掲げてブランドの見直しを進めます。

新商品の発売頻度を高め、京都以外への出店やポップアップを拡大。2025年には60年ぶりにロゴを刷新し、「おみやげの店」から「おなじみの店」への転換を打ち出しました。2026年には清水産寧坂店も、京都の生活者が日常使いしやすい店舗へリニューアルしています。

現在は新商品を1〜2ヵ月に1度発売し、2024年には全国で10回以上のポップアップを実施。2025年には、60年ぶりとなるロゴ刷新を含むリブランディングを発表しました。

事例2.バルニバービ|地域や店舗ごとの強みを起点に、店づくりと広報PRを連動

バルニバービでは、店舗ごとに立地や特徴、抱える課題が異なるため、一律の広報PR施策ではなく、それぞれに合った情報発信が求められていました。広報担当者はスタッフの日報や店舗での対話から、現場の課題や強みを把握しています。

島根県出雲市の「WINDY FARM ATMOSPHERE」では、プレスリリース、記者会見、SNS、地元メディアへの個別の働きかけを組み合わせました。開業前の告知から記者発表、開業後の発信までを関連付け、一度のニュースで終わらせない設計です。

その結果、記者会見には約50社が参加。テレビ東京系列の「WBS」の取材にもつながり、パブリシティ掲載も獲得しました。

事例3.ワークマン|新しい顧客層に合わせ、店舗業態と発信方法を変える

ワークマンは、職人向け作業服の市場が飽和するなか、新たな市場を開拓することが課題となっていました。そこで、高機能・低価格という従来の強みを生かし、2018年に一般客向けの「WORKMAN Plus」を開業しました。

新業態によって客層が広がると、広報体制も変更。2020年には広報部を設立し、新しい顧客層に近い社員がメディア対応を担うなど、「誰が伝えるか」も見直しました。その後も一般客向けの業態を広げ、2026年には「快適普段着」を掲げる「Workman Colors」の出店を進めています。

WORKMAN Plusは開業後に話題を呼び、さまざまなメディアから取材依頼が寄せられるようになりました。

参考:【新業態オープン!】4月30日(木)Workman Colors イオンモール熱田店OPEN‼前々日の28日にはメディア向け内覧会を開催‼ 

まとめ:店舗の価値を定め、発信と店舗体験を一貫させるブランディングを

店舗ブランディングは、看板やロゴを変えたり、SNSの投稿数を増やしたりすることではありません。自店の強みやこだわりを明確にし、誰にどのような価値を提供する店なのかという軸を定め、その考え方を店外への情報発信から来店後の商品、接客、店舗空間まで一貫して反映する取り組みです。

価格だけでは伝わらない店舗の特徴を明確にしておくことで、商品や接客、広報PRで何を伝えるのかを判断しやすくなります。施策を個別に考えるのではなく、同じ店舗の価値に沿ってつなげていくことが大切です。

まずは現在の顧客、競合店、口コミや接客時の声などから、自店が評価されている点を書き出してみてください。そこから自店ならではの価値を言葉にし、店頭の接客や日々の情報発信にずれがないかを見直すことで、店舗全体で一貫した価値を伝えやすくなるでしょう。

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この記事のライター

酒井 美和子

酒井 美和子

広報PR歴20年以上。映画や映画祭などの広報を経て、映像関連の上場企業にて12年間、広報担当として従事。某週刊誌報道を起点とする危機管理広報の実務経験あり。現在はプレスリリースの執筆(累計200本超)をはじめ、広報用ビジュアルのデザインやSNSアカウントの運営など、情報発信全般に携わっている。

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