新しいブランドを立ち上げたいものの、「何から手をつければよいのか」「社内の関係者とどのように進めるべきか」と悩む企業も多いのではないでしょうか。ブランド立ち上げでは、名称やロゴを制作する前に、目的や顧客の課題、提供価値を明確にする必要があります。本記事では、ブランド立ち上げの考え方から具体的な手順、認知を広げる方法、失敗を防ぐポイントまで、企業事例を交えて解説します。
ブランド立ち上げとは?ブランディングとの違いと注目される背景
ブランドとは、企業が決めたロゴや名称だけを指すものではありません。商品・サービスの内容から、接客、Webサイト、情報発信まで、顧客が接する要素を通じて形成されるものです。ここでは、ブランドの基本的な考え方を押さえたうえで、ブランド立ち上げとブランディングの役割の違い、ブランドを明確にする必要性が高まっている市場背景を整理します。

ブランドとは:顧客の心の中に築かれる「らしさ」のイメージ
ブランドとは、ロゴや名称、商品そのものではありません。商品の機能やデザイン、接客、パッケージ、情報発信などを通じて企業が示す顧客への約束と、自社らしさを体系化したものです。
顧客との接点で一貫した価値が提供されると、その企業や商品に対する信頼や独自の印象が心の中に蓄積されます。例えば、使いやすさを掲げる商品であっても、購入方法や問い合わせ対応が複雑であれば、伝えている価値と実際の経験にずれが生じます。
見た目を整えることだけを目的にせず、誰にどのような価値を約束し、商品や対応を通じてどう実現するのかを定めることが、ブランドづくりの出発点です。
ブランド立ち上げとブランディングの違い
ブランド立ち上げは、新しいブランドの目的や提供価値を定め、名称、商品・サービス、顧客との接点などを整えて、社会へ発表するまでのプロセスです。
一方、ブランディングは、ブランドを形成し、価値やイメージを育てるための活動全般を指します。立ち上げ前の設計に加え、ローンチ後の情報発信、顧客との接点の改善、社内への浸透、効果検証も含まれます。
| 目的 | 主な実務内容 | 時間軸 | |
| ブランド立ち上げ | 新しいブランドを設計し、社会へ発表する | 目的・提供価値の整理、名称・ロゴ開発、商品・サービスや顧客との接点への反映 | 企画開始からローンチまで |
| ブランディング | ブランドを形成し、価値やイメージを育てる | ブランド戦略の設計、情報発信、顧客との接点の改善、社内浸透、効果検証 | 立ち上げ前からローンチ後まで継続 |
ブランド立ち上げはローンチまでがひとつの区切りですが、ブランディングはローンチ後も続きます。ローンチ後は、立ち上げ時に定めた提供価値を商品や接客、情報発信へ反映し、顧客の反応を確認しながらブランドを育てていきます。
今、ブランド立ち上げが注目される背景
ブランド立ち上げが重視される背景には、顧客が接する商品や情報の選択肢が広がり、機能や価格だけでは違いを伝えにくくなっていることがあります。企業はSNSや自社ECを通じて、商品だけでなく、開発の背景や作り手の考えも直接発信できるようになりました。
こうした環境では、誰のどのような課題に応え、どのような価値を提供するブランドなのかを明確にする必要があります。商品、販売方法、接客、情報発信で共通する価値を示し、ほかの選択肢との違いを顧客が判断できる状態をつくることが、ブランド立ち上げの役割です。
ブランド立ち上げの前に整理しておきたい3つの前提
ブランド構築を始める前に、立ち上げの目的、顧客の課題を起点に考えること、予算・人員・スケジュールを整理します。関係者の認識をそろえ、後のコンセプト策定や制作で判断がぶれない土台を整えましょう。
前提1.立ち上げの目的と事業上の位置づけを明確にする
最初に明確にするのは、なぜ今、新しいブランドを立ち上げるのかという事業上の目的です。売上の拡大、新しい顧客層の開拓、新市場への参入、企業が提供する価値の再定義など、立ち上げによって実現したい状態を言語化します。
既存事業やブランドとの関係も整理が必要です。既存ブランドの強みや信頼を引き継ぐサブブランドなのか、異なる顧客や価値を対象とする独立したブランドなのかによって、名称、商品構成、発信内容の判断が変わります。
目的を売上を増やすといった広い表現にとどめず、既存事業のどの課題を補い、誰との関係を新たにつくるのかまで明文化します。関係者が同じ目的を共有できれば、後の工程で複数の案が出た際の判断基準になります。
前提2.誰のどのような課題を解決するのか明確にする
ブランド設計では、顧客が抱える課題を出発点にします。どのような人が、どのような場面で不便や不満を感じているのかを関係者間で共有し、自社の都合に偏った商品開発や情報発信を防ぎます。
既存顧客から寄せられる問い合わせや要望、営業担当者が聞いた声、商品やサービスの利用時に生じている問題は、顧客の課題を捉える手がかりです。自社の技術や強みを先に当てはめず、確認できる顧客の状況から考えます。
集めた情報をもとに、ブランドが優先して向き合う顧客の課題を関係者で共有してください。
前提3.予算・人員・スケジュールと推進体制を確認する
ブランド立ち上げに使える予算、担当者、ローンチまでの期間を確認します。調査、商品開発、ロゴやパッケージの制作、Webサイト、広告などに必要な費用を洗い出し、自社で行う業務と外部へ依頼する業務を分けてください。
あわせて、次の担当者を決めます。
- 実務担当者:コンセプト策定、制作管理、情報発信を進める人
- 決裁者:商品仕様や社外へ発信する内容を最終的に決める人
- 運用担当者:ローンチ後の情報発信や問い合わせ対応、改善を担う人
誰が業務を進め、誰が決定するのかを共有しておくことで、担当者の不在や承認待ちによる進行の遅れを防げます。
ブランド立ち上げの手順7ステップ
ブランド立ち上げは、市場・競合・顧客の分析から、コンセプト設計、制作、社内共有、発表、改善へと順に進めます。名称やロゴをつくる前に確認する内容も含め、立ち上げの流れを7つのステップで紹介します。

STEP1.市場・競合・顧客を分析する
最初に、市場、競合、顧客の3つの観点から、ブランドが解決する課題を探ります。それぞれ、次の情報を確認してください。
- 市場:市場規模や変化、法制度、技術、生活者の行動など、事業に関係する動向
- 競合:商品・サービスの内容、価格帯、販売方法、顧客へ伝えている価値
- 顧客:ヒアリング、問い合わせ履歴、口コミ、営業担当者が聞いた声
競合分析では、自社と似た商品を扱う企業だけでなく、同じ顧客課題を異なる方法で解決している商品やサービスも対象にします。企業側の想定だけで課題を決めず、既存の選択肢に対する不満や、利用をためらう理由を捉えることが必要です。
このSTEPでは、集めた情報をもとに、既存の商品・サービスで十分に満たされていない顧客の課題を特定します。
STEP2.優先する顧客と市場での立ち位置を定める
分析で見つけた課題をもとに、優先して価値を届ける顧客と、市場におけるブランドの立ち位置を定めます。顧客像は、年齢、性別、居住地などの属性だけでなく、生活様式、抱えている課題、価値観、利用場面、情報収集の方法まで具体化します。
対象を広げすぎると、提供価値や発信内容も広がり、ブランドの特徴が伝わりにくくなります。優先する顧客を定め、どのような状況で商品やサービスを必要とするのかを整理してください。
市場での立ち位置を考える際は、競合と比べた機能や価格だけでなく、自社の技術、経験、提供方法などから、どのような違いを示せるかを検討します。誰に価値を届け、競合ではなく自社が選ばれる理由を説明できれば、このSTEPは完了です。
STEP3.ブランドコンセプトを設計する
ブランドコンセプトは、ブランドの目的、顧客の課題、自社の強み、提供価値をひとつの軸にまとめた判断基準です。広告用のコピーではなく、商品開発やデザイン、接客、情報発信の方向をそろえるために設計します。
誰に、どのような価値を、どのような姿勢で届けるのかを簡潔に言語化します。その価値を自社が提供できる根拠として、技術、実績、事業経験、社内に蓄積された知識なども洗い出してください。顧客が求めていても自社が継続して提供できない価値や、自社が得意でも顧客の課題と結び付かない内容は、コンセプトの中心には置けません。
ブランドの目的、顧客の課題、提供価値、自社らしさが簡潔な言葉にまとまり、関係者が共通の判断基準として使える状態が、このSTEPのゴールです。
STEP4.ブランドコンセプトを言語・視覚要素へ落とし込む
ブランドコンセプトを、顧客が認識できるブランドネーム、タグライン、ロゴ、カラーなどへ落とし込みます。各要素を担当者の好みや流行だけで決めず、コンセプトで定めた提供価値や自社らしさと一致しているかを基準に制作します。
名称やタグラインが伝える価値と、ロゴや写真から受ける印象が食い違っていないかも検証が必要です。Webサイト、商品パッケージ、印刷物、SNS、プレスリリースなど、実際に使用する場所へ当てはめ、見やすさや扱いやすさも確かめます。
ロゴやカラー、書体、写真、文章の言葉遣いなどはガイドラインにまとめ、関係者が同じ基準で使用できる状態を整えます。
STEP5.商品・サービスと顧客体験へ反映し、社内に浸透させる
ブランドコンセプトと、STEP4で定めたロゴ、カラー、書体、写真、言葉遣いなどのガイドラインを、商品・サービスや顧客との接点へ反映します。名称やロゴだけでなく、商品の機能、価格、パッケージ、販売方法、接客、Webサイト、購入後の対応まで対象に含めます。
顧客がブランドを知り、比較し、購入・利用し、その後にサポートを受ける流れに沿って、コンセプトと実際の顧客体験にずれがないかを点検してください。商品と情報発信だけでなく、問い合わせ方法や担当者の説明もブランドの印象を形づくります。
並行して、商品開発、営業、接客、広報などへブランドの目的と判断基準を共有するインナーブランディングを進めます。部署や顧客との接点によって説明や対応が食い違わないよう、社内の共通理解と運用基盤を整える段階です。
STEP6.ブランドを世の中に発表する
ローンチ日を定め、ブランドの発表と同時に、顧客が商品・サービスを購入・利用できる準備を進めます。公式Webサイト、商品・サービスの内容、価格、画像素材、購入・利用方法、問い合わせ先、取材窓口を事前にそろえてください。
プレスリリースは、ブランドの立ち上げを社会へ伝える公式な第一声です。ブランドの概要、立ち上げた背景、向き合う顧客の課題、提供価値、開発過程、今後の展望を事実に基づいて整理します。社会的な課題と直接関係する場合は、その背景を裏付ける調査結果や数値も示します。
ローンチ日に合わせてプレスリリースを配信し、公式WebサイトやSNSでも必要な情報を公開します。発表後、顧客が商品・サービスを購入・利用でき、メディア関係者が取材に必要な情報を確認して問い合わせられる状態が、このSTEPのゴールです。
STEP7.効果を測定してブランドを改善する
ローンチ後は、ブランドを立ち上げた目的に照らして定量情報と定性情報を集め、ブランドコンセプトと顧客の受け止め方にずれがないかを検証します。
- 定量情報:指名検索数、Webサイトへの流入数、メディア掲載実績、SNS上の言及数、問い合わせ件数、購入数、継続利用率など
- 定性情報:問い合わせ内容、口コミ、顧客へのヒアリング、営業や接客担当者が聞いた声など
施策の実施後に指名検索数や購入数が増えても、その施策だけによる成果とは限りません。ほかの施策や季節要因の影響も踏まえて評価し、商品、説明方法、情報発信、顧客との接点の改善点を特定します。改善する内容ごとに担当者と実施期限を決め、次回の検証につなげます。ローンチ後も検証と改善を繰り返し、ブランドを継続的に育てていきましょう。
ブランドコンセプトを形にする要素
設計したブランドコンセプトは、理念、名称、言葉、視覚表現へ落とし込むことで、商品開発や情報発信に活用できる基準になります。各要素を個別に制作するのではなく、同じ提供価値や自社らしさを表しているかを確かめることが必要です。ここでは、社内外で共通して使用する4つの基本要素を確認します。
ミッション・ビジョン・バリュー
ミッション・ビジョン・バリューは、ブランドの存在理由と進む方向を示すものです。それぞれの役割は次のように分かれます。
- ミッション:ブランドが存在する理由や果たす役割
- ビジョン:ブランドの活動を通じて実現したい未来
- バリュー:意思決定や行動で重視する価値観
企業全体ですでにミッション・ビジョン・バリューを定めている場合は、新しいブランドとの関係を整理します。企業理念をそのまま使用するのか、ブランドの顧客や提供価値に合わせて具体化するのかを決めてください。
これらは社外向けに掲げる言葉だけではありません。商品仕様の決定、顧客対応、広報で伝える切り口など、複数の案からひとつを選ぶ際に、社内の関係者が立ち返る共通の判断軸となります。
ブランドネーム・タグライン
ブランドネームは、顧客がブランドを識別し、記憶するための名称です。次の点を踏まえて検討します。
- 覚えやすく、発音しやすいか
- 言葉の意味が商品や提供価値と合っているか
- 競合ブランドと区別できるか
- 海外展開する地域で不適切な発音や意味にならないか
タグラインは、ブランドが提供する価値や目指す方向を短い言葉で表します。印象に残ることだけを目的にせず、ブランドコンセプトと結び付き、商品や情報発信で継続して使用できる内容にしてください。
名称を決定する前には、同一または類似する商標の登録状況、法人名、公式Webサイト用のドメイン、主要SNSのアカウントを調べます。商標登録の可否は事業分野や指定商品・役務によって異なるため、必要に応じて弁理士などの専門家へ相談しましょう。
ロゴ・カラーなどのVI
VIとはビジュアル・アイデンティティの略で、ブランドの特徴をロゴ、カラー、書体、写真、イラストなどによって視覚的に示すものです。見た目の好みだけで選ばず、ブランドコンセプトで定めた提供価値や自社らしさと一致しているかを基準にします。
Webサイト、商品パッケージ、名刺、展示会ブース、販促ツールなど、使用する場所やサイズが変わった場合の見え方も検証します。ロゴを識別できるか、文字が読みづらくならないか、背景色が変わっても視認性を保てるかといった実用面も確かめてください。
最小使用サイズ、余白、使用できる色や書体、写真の選び方、禁止する表現などはガイドラインにまとめます。制作担当者や使用する場所が変わっても、共通した印象を保つための基準となります。
ブランドストーリー・トーン&マナー
ブランドストーリーは、ブランドを立ち上げた背景や原体験、解決したい課題、開発過程で工夫を重ねた経緯、目指す未来を一連の流れとして伝えるものです。印象を強めるために脚色せず、社内資料や関係者へのヒアリングから確認できる事実を整理します。
トーン&マナーは、文章の言葉遣い、写真やデザインの雰囲気、顧客への接し方など、ブランドの表現に関するルールです。公式Webサイト、SNS、プレスリリース、取材対応ですべてを同じ表現にするのではなく、共通して伝える価値を保ちながら、それぞれの用途に合わせて調整します。
誕生の背景や開発過程は、ローンチ時だけでなく、その後のプレスリリースや取材対応にも活用できる情報素材です。日付、数値、関係者の発言、開発記録など、内容を裏付ける情報もあわせて管理してください。
立ち上げたブランドの認知を広げる方法
ブランドの認知を広げるには、ローンチ時の発表に加え、その後も情報へ触れる機会をつくる必要があります。プレスリリース、SNS、公式Webサイト、Web広告、イベントでは、届く相手や役割が異なります。顧客の情報収集行動、商品特性、目的、予算、人員を踏まえ、自社に必要な方法と優先順位を決めます。
プレスリリース配信:ブランドローンチを社会に発信する基本の手法
新ブランドの立ち上げは、企業が新たな事業や提供価値を社会へ示す機会であり、プレスリリースの発信テーマになります。販売実績がない段階でも、立ち上げた理由、開発過程、顧客の課題、提供価値、今後の展望など、発信できる情報があります。
自社の宣伝文句を並べるのではなく、独自の技術や仕組み、生活者や業界の変化との関係など、メディア関係者がニュースとして判断できる事実を整理します。社会的な課題と直接関係するブランドでは、その背景を裏付ける調査結果や数値も必要です。
取材の可否を判断できるよう、商品・サービスの概要、販売情報、利用場面がわかる画像、問い合わせ先をそろえてください。ただし、配信すれば必ず記事になるわけではありません。メディア関係者がニュース性や取材の可否を判断できるよう、必要な事実を整理して提供することが重要です。
SNS運用:ブランドの活動を継続的に伝える
SNSは、商品・サービスの情報だけでなく、開発過程、利用場面、製造や開発に携わる人の姿勢などを継続的に伝える手段です。写真や動画で特徴を示しやすい商品や、担当者が顧客との対話を続けられるブランドに適しています。
複数のSNSを一度に始めるのではなく、顧客が情報収集に利用しているサービスと、自社で定期的に用意できる情報の形式から選びます。商品の使い方を動画で見せる、開発担当者が背景を説明する、イベントの様子を写真で伝えるなど、ブランドコンセプトと結び付く内容を整理してください。
いいね数だけで成果を判断せず、コメントの内容、保存数、公式Webサイトへの流入なども確認します。寄せられた質問や関心は、次回の投稿だけでなく、商品説明、よくある質問、プレスリリースの切り口を見直す材料になります。
オウンドメディア・公式Webサイト:ブランドの情報を蓄積する
オウンドメディアや公式Webサイトは、ブランドに関する情報を自社で管理し、蓄積する拠点です。ブランドの概要、商品・サービスの特徴、価格、購入方法、開発背景、ブランドストーリーなどを公式情報としてまとめます。
SNSやプレスリリースでは伝えきれない詳しい説明を掲載できるため、機能や開発方法の説明が必要な商品や、購入までの比較検討期間が長いサービスに適しています。ほかの発信を通じてブランドを知った人が、購入や問い合わせを判断するための受け皿にもなります。
販売状況、価格、問い合わせ先などが最新の内容になっているか、定期的に点検してください。検索されている内容や顧客から寄せられた質問を記事へ反映し、必要な情報へたどり着きやすい構成に整えます。
Web広告:届けたい顧客へ短期間で情報を届ける
Web広告は、検索語句、地域、年齢層、興味関心などの条件を設定し、ブランドを知ってほしい顧客へ一定期間、情報を届ける方法です。ローンチや期間限定商品、ポップアップストアの告知など、対象と実施期間が明確な発信に活用できます。
広告を出す前に、公式Webサイトへ誘導する、サンプルの申し込みを得る、商品を購入してもらう、問い合わせを受けるなど、目的とする行動を決めます。広告で伝える内容と、広告をクリックした先のWebページに掲載された商品情報や利用方法が食い違っていないかも確認が必要です。
配信後は、表示回数やクリック数に加え、申し込みや購入、問い合わせにかかった費用も把握します。予算と期間を区切って結果を比較し、配信条件、広告の画像や文章、リンク先のページのどこを見直すか判断してください。
ポップアップストア・体験型イベント:商品や世界観に触れる機会をつくる
ポップアップストアや体験型イベントは、試食、試着、試用、実演、対面接客などを通じて、オンラインだけでは伝えにくい商品の特徴やブランドの考え方に触れてもらう方法です。味、香り、質感、着心地、使いやすさなど、実際の体験が判断材料となる商品に適しています。
開催前には、商品の販売、利用方法の説明、顧客の反応の収集など、イベントの目的を定めます。来場者数だけで評価せず、どの商品に関心が集まったか、どのような質問や意見が寄せられたかも記録してください。得られた情報は、商品や接客、説明方法の改善に活用できます。
会場の写真、担当者による説明、来場者から多く寄せられた質問は、開催後のSNSや公式Webサイトでも発信できます。プレスリリースに展開する場合は、来場者数や質問の傾向など、確認できる事実を活動実績として整理します。
ブランド立ち上げでよくある失敗パターンと対策
ブランド立ち上げでは、デザインの先行、対象顧客の広げすぎ、ローンチ後の発信停止、社内共有の不足が失敗につながります。ここでは、4つの失敗パターンとその原因、対策方法を紹介します。
失敗パターン1.ロゴやデザインの制作が先行してブランドの軸がぶれる
ブランドコンセプトを固める前に、ロゴやパッケージ、Webサイトの制作を始めると、デザインが完成していても、商品展開や情報発信で伝える内容がそろわず、ブランドの提供価値を説明できないことがあります。
誰にどのような価値を届けるのかを言語化しないまま、制作へ進むことが主な原因です。共通の判断基準がないため、制作担当者や経営層の好み、流行などによって案が選ばれ、商品や発信ごとに異なる印象が生まれます。デザインを先に検討すること自体ではなく、案を評価する基準がないことが問題です。
制作へ進む前に、ブランドの存在理由、優先する顧客、解決する課題、提供価値を文章にまとめ、関係者へ共有してください。すでに制作している場合は、各案とブランドコンセプトとの関係を説明し、結び付きを示せない要素を見直します。
失敗パターン2.対象とする顧客を広げすぎて選ばれる理由が伝わらない
幅広い顧客へ対応しようとした結果、商品の特徴や発信内容が抽象的になり、誰のどのような課題を解決するブランドなのかわからなくなることがあります。多くの機能を加えたことで、中心となる提供価値が見えにくくなる状態も同様です。
原因は、優先する顧客と課題を定めず、異なる要望へ同時に応えようとすることです。年齢や利用目的が異なる顧客へひとつの表現で伝えようとすると、商品説明やコピーも一般的な内容になりやすくなります。
もっとも価値を届けたい顧客と、優先して解決する課題を具体化してください。あわせて、提供しない機能や価値も決めます。新しい要望が出た際は、ブランドの目的や強みと一致するかを基準に採否を判断し、限られた予算や人員を中心となる提供価値へ配分します。
失敗パターン3.ローンチ時の告知で終わり継続的な発信が続かない
プレスリリースの配信や発表イベントを終えた後、情報発信が止まると、新たにブランドを知る人へ情報を届ける機会が減ります。すでに関心を持った人も、現在の商品情報や活動状況を確認しにくくなります。
ローンチ後に発信するテーマをあらかじめ整理し、年間の発信カレンダーに組み込みます。あわせて、各部署から情報を集める担当者と確認時期を決め、継続的に情報を集約できる体制を整えてください。
失敗パターン4.社内への共有が不足して顧客接点ごとに印象が変わる
公式Webサイトやプレスリリースでは共通した価値を伝えていても、営業担当者の説明、店舗での接客、購入後の問い合わせ対応で内容が異なることがあります。顧客が接する場所によって、ブランドへの印象が変わる状態です。
原因は、ブランド立ち上げが企画や広報など限られた部門の中だけで進み、商品開発、営業、接客、顧客対応などへ目的や判断基準が共有されていないことです。ロゴや表現ルールを配布するだけでは、各担当者が自分の業務に置き換えて判断できません。
ブランドブックには、目的、顧客の課題、提供価値、トーン&マナーに加え、顧客への説明例、判断に迷いやすい場面、Q&Aを記載します。関係部署を対象とした説明会で業務との関係を確認し、質問や認識の違いを整理してください。
ブランド立ち上げを成功させる5つのポイント
ブランドは、立ち上げ時に定めたコンセプトやルールを守るだけでは育ちません。顧客の反応や事業の変化を踏まえ、商品や表現、運用方法を見直す必要があります。情報発信や顧客対応で一貫性を保ち、中長期の変化を検証しながらブランドを育てていくための5つのポイントを確認します。

ポイント1.顧客の反応をもとに選ばれる理由を更新する
立ち上げ時に定めた提供価値や顧客像を固定せず、実際の反応をもとに選ばれる理由を見直します。問い合わせ、購入時のアンケート、口コミ、SNSへの投稿、営業や接客担当者が聞いた声から、顧客が評価している点や購入を迷う理由を集めてください。
集めた反応を商品や発信へ反映するかは、複数の顧客に共通するか、自社が継続して提供できる価値か、ブランドコンセプトと一致するかを基準に判断します。個別の要望へすべて対応すると、ブランドの目的や強みから外れ、提供価値が広がりすぎる場合があるためです。
顧客が評価している点と、企業が伝えている内容に違いがあれば、商品や説明方法を見直します。ブランドの軸は保ちながら、選ばれている理由を具体化し、次の商品改良や情報発信へ反映してください。
ポイント2.変えない価値と接点ごとに変える表現を分ける
ブランドの一貫性とは、商品、Webサイト、SNS、広告、プレスリリース、接客ですべて同じ言葉や見せ方を使うことではありません。共通して伝える価値は保ちながら、各接点の役割や情報量に合わせて表現を調整します。
- 変えないもの:ブランドが解決する課題、優先する顧客、提供価値、ミッション
- 変えるもの:言葉遣い、文章の長さ、画像や動画、情報の切り口、伝える順序
例えば、公式Webサイトでは商品の機能や購入条件を詳しく説明し、SNSでは利用場面を写真や動画で伝えます。プレスリリースでは、立ち上げの背景や社会との関係を事実に基づいて示します。各接点で表現が異なっても、同じ提供価値を説明できる状態にすることが必要です。
ポイント3.短期の売上とブランド構築を混同しない
値引きキャンペーンやWeb広告による短期的な売上と、ブランドへの認知、想起、継続購入などの変化では、確認する期間と指標が異なります。施策の実施直後に売上が増えた場合も、その結果だけでブランド構築の成果を判断しないようにします。
短期的な施策では、広告からの流入数、問い合わせ件数、購入数などを確認します。中長期では、指名検索数、継続購入率、顧客が挙げる購入理由、SNS上の言及内容などを記録してください。指標ごとに確認する時期を決め、一定期間の変化を比較します。
売上には、値引き、季節、競合商品の動向など、ブランド以外の要因も関係します。複数の指標を組み合わせ、ブランドを立ち上げた目的と評価期間に合った指標を選ぶことが必要です。
ポイント4.ブランドを管理する担当と判断の流れを決める
ブランドを継続して管理するには、専任・兼任を問わず、表現や施策を確認する担当者と意思決定の流れを明確にします。ブランドブックを作成しても、確認する人や変更を承認する責任者が決まっていなければ、新商品や発信内容ごとに判断が変わりかねません。
表現を確認する担当者、変更を承認する責任者、商品開発や営業などの関係部署から意見を集める方法を決めます。変更内容に応じて、担当者が判断できる範囲と、経営層や責任者の承認が必要な範囲を分けてください。
新商品や新しい発信先が加わった際は、現場から寄せられた疑問や改善案を記録します。従来の基準では判断できない事例がないか定期的に振り返り、ブランドブックや承認手順へ反映できる体制を整えます。
ポイント5.ブランドの変化を継続的な発信テーマにする
ブランドの情報発信は、新商品やキャンペーンの告知だけに限りません。商品を改良した理由、顧客から寄せられた質問、異業種との協業、イベントの開催結果、品質向上に向けた社内の取り組みなど、ブランドが変化する過程も発信テーマになります。
広報PR担当者だけで情報を探すのではなく、商品開発、営業、接客、顧客対応などから定期的に情報を集めます。何が変わったのか、なぜ取り組んだのか、顧客や社会のどのような課題と関係するのかを確認し、プレスリリース、SNS、公式Webサイトに適した内容を選んでください。
年間の情報発信計画は予定を管理する基準として使いながら、生活者や社会の変化、新たな活動に応じて見直します。発信するために話題をつくるのではなく、実際の取り組みから生まれた事実を収集し、次の発信へつなげます。
ブランド立ち上げの成功事例3選
ブランド立ち上げを成功させるためのヒントとして、顧客や社会の課題から新ブランドを開発した3社の取り組みを紹介します。各社が立ち上げの背景と提供価値を、商品・サービスや情報発信へどのように反映したのかを見てみましょう。
事例1.フルーツゼリーメーカー「たらみ」|若い世代との接点を広げる新ブランドを開発
たらみは、ゼリーメーカーとしては知られている一方、個々の商品ブランドの認知が十分ではないという課題がありました。そこで、40~50代に比べてゼリーを選ぶ機会が少ない20~30代へ届けるため、2025年3月にトレンドデザートを手軽に楽しめる新ブランド「たらみ Dessert」を立ち上げました。
第1弾では台湾スイーツに着目し、担当者が台湾料理店を巡って10種類以上を試食し、調査で得た情報を商品、商談資料、プレスリリースへ反映しました。商品開発を担うマーケティング部が、開発、調達、製造、営業の各部門と連携しながら、商品づくりと広報PRを一貫して進めています。
事例2.インナーウェアメーカー「タカギ」|女性の生活課題から新ブランド「ayame」を立ち上げ
OEMや小売店への卸売を中心としていたタカギには、品質の高い商品でも価格で比較されやすく、ものづくりへの考えや商品の価値を生活者へ十分に伝えられていないという課題がありました。そこで自社ブランドの開発と広報PRを強化し、2021年にはジェンダーに関する課題と向き合い、女性の社会での活躍を応援するアンダーウエアブランド「ayame」を立ち上げました。
情報発信では、つくり手側と受け手側の2つの視点を持ち、お客さまが知りたい情報は何かを考えることを大切にしています。プレスリリースでは、伝えたいことを8割程度に絞ることも工夫のひとつです。広報PRの強化後には、展示会で発信について声をかけられる機会や協業の相談が増え、業界内での認知度の高まりを実感しているといいます。
ものづくりの背景や商品の価値を、つくり手の視点だけで説明せず、受け手に必要な内容へ整理して発信している事例です。
事例3.三和建設「HuePLUS」|新ブランドと人材課題を結び付け、3つの切り口で発信
三和建設は、採用や人材定着に悩む企業に対し、社員寮の建設だけでなく、採用や育成の仕組みまで支援する「HuePLUS」を2023年に立ち上げました。経営層や社員が参加するワークショップで、企業のありたい姿や理想の社員像を話し合い、その内容を社員寮のコンセプトや間取りへ反映しています。
発表時には、情報をひとつのプレスリリースへ詰め込まず、新ブランドの概要、社員寮の事例、新入社員の定着実績という3つの切り口に分けて配信しました。社員寮を取りやめる企業も多いなかでの意外性と、離職防止という社会性がニュースの切り口となり、建設業界の専門メディアに加えて一般のメディアにも掲載されています。
ブランドの提供価値を社会的背景と結び付け、複数のニュースへ展開する切り口の設計が参考になります。
まとめ:ブランド立ち上げは目的と提供価値の言語化から始めよう
本記事では、ブランド立ち上げの前提や手順、コンセプトを形にする要素、認知を広げる方法、失敗を防ぐポイントを紹介しました。
ブランド立ち上げは、名称を決め、ロゴを制作して完了するものではありません。誰のどのような課題を解決し、どのような価値を提供するのかを定め、商品・サービス、接客、Webサイト、情報発信へ一貫して反映することが重要です。ローンチ後も顧客の反応を確認しながら、商品や伝え方を見直していきます。
まずは、ブランドを立ち上げる目的と解決したい顧客の課題を書き出し、商品開発、営業、広報などの関係者と共有することから始めましょう。名称やロゴより先に言語化すべきものを整理する。その順序を守ることが、ブランド立ち上げを成功に近づける第一歩です。
PR TIMESのご利用を希望される方は、以下より企業登録申請をお願いいたします。登録申請方法と料金プランをあわせてご確認ください。
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