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ブランドストーリーとは?広報PRに活かせる作り方と成功のポイントを解説

ブランドストーリーとは?広報PRに活かせる作り方と成功のポイントを解説
この記事でわかること
ブランドストーリーとは、企業や商品・サービスが生まれた背景や価値観、目指す未来を物語として伝える考え方です。本記事では、ブランドストーリーの定義や5つの構成要素、作り方を解説。プレスリリースやSNS、採用広報での活用方法、企業事例、失敗を防ぐポイントも紹介します。

「プレスリリースを発表しても内容が十分に伝わらない」「自社ならではの価値をうまく言語化できない」という悩みを抱える広報PR担当者は少なくありません。新製品や実績を発表するだけでは、多くの企業が情報を発信する現在、取り組みの背景や意味まで知ってもらうことは容易ではありません。

そこで重要となるのが、企業や事業の背景にある“なぜ”を整理し、発信につなげるブランドストーリーの活用です。本記事では、ブランドストーリーの定義や構成要素、具体的な作成手順、プレスリリースへの組み込み方まで、活用方法を解説します。

目次
  1. ブランドストーリーとは:定義と広報PRにおける役割

  2. ブランドストーリーが広報PR活動にもたらす効果

  3. ブランドストーリーに欠かせない5つの構成要素

  4. ブランドストーリーの作り方 実践5ステップ

  5. ブランドストーリーを広報PRで活用する5つの方法

  6. プレスリリースでのブランドストーリーの書き方・注意点

  7. ブランドストーリー作りでよくある失敗パターンと対策

  8. ブランドストーリーを広報PRに活用している企業事例

  9. 共感されるブランドストーリーを作るための4つのポイント

  10. まとめ:ブランドストーリーは「語るため」ではなく「伝わるため」にある

ブランドストーリーとは:定義と広報PRにおける役割

ブランドストーリーを広報PRで活用するには、まず定義と役割を正しく理解することが重要です。ブランドコンセプトや企業理念との違いも整理しておくこと、その後の情報発信に生かしやすくなります。

役割とは?

ブランドストーリーとは「事実」に「意味」を加えた物語

ブランドストーリーとは、企業や商品・サービスが生まれた背景や価値観、目指す未来を物語として伝える考え方です。具体的な内容は「事実」と、その事実に込められた「意味や理由」で構成されます。

例えば「伝統工芸の技法を使った新商品を発売」という事実に対し、「後継者不足に悩む職人の技を次世代に残すため、日常使いできる商品を開発した」といった背景を加えることで、商品の目的や企業が向き合った課題まで読み手に伝えられます。

ブランドストーリーとブランドコンセプト・企業理念との違い

ブランドストーリーは、ブランドコンセプトや企業理念と混同されることがあります。違いを整理すると、以下の通りです。

  • ブランドストーリー:企業やブランドが歩んできた背景や価値観を、出来事や時間軸を交えて伝えるもの
  • ブランドコンセプト:ブランドが提供する価値や約束を端的に表したもの
  • 企業理念:企業の存在意義や経営の基本的な考え方を示したもの

企業理念が「地域社会への貢献」、ブランドコンセプトが「地域の暮らしを支える」であれば、ブランドストーリーでは、その考え方が生まれた創業時の出来事や意思決定の背景を伝えます。こうした具体的な出来事を示すことで、理念やコンセプトだけでは伝わりにくい企業の価値観まで理解してもらいやすくなります。

広報PRにおけるブランドストーリーの役割(情報→共感への転換)

広報PRの役割は、単なる情報伝達ではなく、ステークホルダーからの理解と共感を得ることにあります。ブランドストーリーは、企業が伝えたい情報と、受け手がその情報に意味を見いだす過程をつなぐ役割を果たします。

背景のない発表と、背景を伝えた発表では情報の受け取られ方が変わります。機能だけを伝えるプレスリリースよりも、開発背景や取り組みに至った理由まで示したプレスリリースの方が、企業の姿勢や社会的な意味が伝わります。その結果、メディアは記事化する価値を判断しやすくなり、生活者も企業への関心を持つきっかけになります。

なぜ今、広報PRにブランドストーリーが求められるのか

近年、ブランドストーリーが広報PRで重視されるようになった背景には、企業を取り巻く情報発信環境の変化があります。SNSやオウンドメディアなど発信チャネルが増え、生活者は日々多くの企業情報に触れるようになりました。そのため、新商品やサービスの機能、新規性といった事実だけでは、他の情報に埋もれやすくなっています。

こうした環境では、「なぜこの取り組みを行うのか」「どのような価値を提供したいのか」といった背景や意味が、企業の姿勢を伝える重要な情報になり、他社との差別化にもつながります

ブランドストーリーが広報PR活動にもたらす効果

情報にブランドストーリーを含めることで、メディアや生活者に伝わりやすくなり、広報PR活動にもさまざまな効果をもたらします。

メディア掲載につながる情報価値を高める(文脈のある情報になる)

メディア情報を届ける際は、単なる製品やサービスの紹介だけでなく、「なぜ今、この企業が取り組むのか」という背景や社会的文脈も重要です。そのため、開発経緯や創業時の想い、社会課題への問題意識などを添えることで、記事として取り上げる価値を判断しやすくなります。

新商品の発売の際に、機能だけを説明するより、開発のきっかけや解決したかった課題といったブランドストーリーがあることで、企業の背景まで含めて報道価値を伝えやすくなります。

読者・顧客の共感と記憶に残る

ブランドストーリーは、商品やサービスの特徴だけでなく、その背景や価値観まで伝えられるため、読者や顧客の理解や共感につながります。企業が何を目指し、どのような課題を解決しようとしているのかが伝わることで、共感を得やすくなります。

また、背景や想いを含むストーリーは、事実だけを伝える情報よりも印象に残りやすい傾向があります。共感を得た情報がSNSで共有されれば、企業やブランドを新たに知ってもらう接点にもなります。

採用・インナー広報への波及効果

ブランドストーリーは、社外だけでなく社内にも共通の価値観を浸透させる役割を果たします。企業が目指す方向性を明確にすることで、求職者は自社との相性を判断しやすくなり、考え方に共感する人材との接点も生まれます。

また、既存の社員にとっても、創業の背景や事業に込めた想いを共有することは、自社の存在意義を再認識する機会になります。価値観を共有することで、社内エンゲージメントの向上や組織の一体感の醸成にも寄与します。

発信の一貫性が生まれる(広報の軸になる)

根幹となるブランドストーリーが定まることで、プレスリリースやSNS、オウンドメディアなど複数の発信で伝える内容に一貫性が生まれます。

その都度伝える内容を考えるのではなく、「自社は何を大切にしている企業なのか」という軸から発信を組み立てられるためです。継続的な情報発信を通じて企業の姿勢や価値観が伝わり、その積み重ねが企業やブランドへの理解や信頼につながります。

ブランドストーリーに欠かせない5つの構成要素

ブランドストーリーは、エピソードを並べれば完成するものではありません。企業の背景や価値観を伝えるために押さえておきたい5つの要素があります。

1.創業の原体験:ブランドが生まれた「なぜ」

ブランドストーリーの出発点となるのが、創業や事業立ち上げの背景です。どのような課題意識や原体験がきっかけとなり、事業を始めたのかを示すことで、ブランドの存在理由が伝わります。

単に創業年や沿革を並べるのではなく、「なぜその事業を始めようと思ったのか」という意思決定の背景を伝えることが重要です。企業の原点を明確にすることで、その後の取り組みや価値観にも一貫した文脈が生まれます。

2.課題と葛藤:乗り越えてきたリアルなストーリー

成功した出来事だけでなく、課題や葛藤も重要な要素です。順調な歩みだけを描くよりも、困難に直面しながらどのような判断を重ねてきたのかを伝えることで、ストーリーに説得力が生まれます。

商品開発で工夫を重ねた経験や、市場環境の変化への対応などは、企業の姿勢を伝えるエピソードになります。課題をどのように乗り越えたのかを示すことで、読み手は企業の価値観をより具体的に理解できます。

3.独自の価値観:他社にはない判断基準や信念

ブランドストーリーでは、「何をしている企業か」だけでなく、「どのような価値観で判断している企業か」を伝えることも欠かせません。

例えば、品質を最優先するのか、地域とのつながりを重視するのかなど、意思決定の基準を示すことで、その企業らしさが伝わります。商品やサービスが変化しても、判断基準となる価値観が一貫していれば、発信全体にも一貫性を持たせやすくなります。

4.顧客との接点:届けたい相手と届いた瞬間の描写

誰のどのような課題に向き合い、どのような価値を提供してきたのかを示すことで、読み手は自分との関係性をイメージしやすくなります。

顧客との具体的な接点や、商品・サービスが価値を発揮した場面を通して、ブランドが社会の中で果たしている役割も伝えられます。企業視点だけでなく、受け手の視点を取り入れることが、共感につながるブランドストーリーをつくるうえで重要です。

5.未来へのビジョン:ブランドが目指す世界観

過去や現在の取り組みだけでなく、これから目指す方向性まで含めて伝えることで、ひとつの物語としてまとまります。

企業が将来どのような価値を提供したいのか、社会にどのような影響を与えたいのかを示すことで、現在の取り組みとのつながりが明確になります。未来へのビジョンまで含めることで、ブランドストーリー全体に一本の軸が通ります。

ブランドストーリーの作り方 実践5ステップ

ブランドストーリーを作成する際は最初から文章を書き始めるのではなく、事実や価値観を順番に整理しながら組み立てることが大切です。ここでは、広報PRの実務で取り組みやすい5つのステップに沿って作り方を解説します。

ステップ

STEP1.ブランドの原点を掘り起こす

まずは、ブランドが生まれた背景となる事実を整理します。創業のきっかけや商品開発の経緯、事業の転機などを時系列で振り返ることで、ブランドストーリーの土台が見えてきます。

この段階では、印象的なエピソードを探そうとする必要はありません。創業者や開発担当者へのヒアリング、社内資料、過去のプレスリリースなどをもとに、事実を漏れなく洗い出すことが重要です。まずは出来事を整理し、その背景や意味を後から掘り下げることで、ブランドストーリーの軸を整理できます。

STEP2.自社の強みと価値観を言語化する

整理した出来事に対して、「なぜその判断をしたのか」を掘り下げます。同じ出来事でも、その背景にある価値観が明確になることで、ブランドらしさが伝わるストーリーになります。

どの顧客を大切にしてきたのか、何を優先して事業を続けてきたのかなど、意思決定の理由を整理してみましょう。出来事だけで終わらせず、その判断基準を言語化することで、発信の軸が明確になります。

STEP3.誰に届けたいストーリーなのか明確にする

次に「誰に届けたいのか」を明確にします。同じ出来事でも、届ける相手によって関心を持つポイントや、伝えるべき内容は異なるためです。

例えば、採用広報では企業文化や働く人の想いが重視され、プレスリリースでは社会的な意義やニュース性が求められます。届ける相手を先に決めることで、強調する内容や伝える順番が定まり、情報の優先順位も決めやすくなります。

STEP4.ストーリーの骨格を組み立てる

整理した事実や価値観を、読み手が理解しやすい流れに組み立てます。単なる出来事の羅列ではなく、「背景→課題→取り組み→現在→未来」のように流れを意識することが大切です。

また、すべての情報を盛り込もうとせず、伝えたいテーマに関係する内容へ絞ることも重要です。文章を書く前に構成を整理しておくことで、読み手にも意図が伝わりやすくなります。

STEP5.発信チャネルに合わせて表現を最適化する

プレスリリースでは背景を簡潔にまとめ、コーポレートサイトでは創業ストーリーを詳しく伝えるなど、発信先ごとに情報量を変えることが効果的です。

ひとつのブランドストーリーを軸に、それぞれの発信目的に合わせて表現を工夫することで、どの発信でもブランドらしさを伝えやすくなります。

ブランドストーリーを広報PRで活用する5つの方法

ブランドストーリーをプレスリリースやコーポレートサイト、SNSなど、さまざまな情報発信に取り入れることで、一貫したメッセージを伝えやすくなります。ここでは、広報PRで活用しやすい5つの方法を解説します。

プレスリリースに組み込む(背景・開発ストーリー)

プレスリリースでは、「何を発表するか」だけでなく、「なぜその取り組みを行うのか」という背景を伝えることで、発表内容への理解を深められます。開発の経緯や創業時の想い、社会課題への問題意識などを加えることで、情報に文脈が生まれ、企業の姿勢も伝わりやすくなります。

ブランドストーリーは、リリース全体で詳しく語る必要はありません。背景説明や開発経緯など、必要な箇所に取り入れることで、事実を伝えながらストーリーも補足できます。発表内容を主軸としつつ、背景を適切に添えることが、伝わりやすいプレスリリースにつながります。

コーポレートサイト・オウンドメディアに展開する

コーポレートサイトやオウンドメディアは、ブランドストーリーを継続的に伝えられる場です。創業の背景や企業理念、商品開発の経緯などを体系的に掲載することで、企業への理解を深めてもらいやすくなります。

また、プレスリリースやSNSから興味を持った人が詳しい情報を確認する場としても活用できます。ブランドストーリーを軸に情報を整理することで、企業全体の情報発信に一貫性が生まれます。

SNSでストーリーテリングとして発信する

SNSでは、商品やサービスの告知だけでなく、開発の背景や社員の想い、日々の取り組みなどを発信することで、企業が大切にしている考え方を継続的に伝えられます。

新商品が生まれるまでの過程や、担当者の工夫、企業として大切にしている判断基準などを紹介することで、商品だけでは伝わらない企業の価値観も届けられます。 

また、写真や動画を活用しながら発信することで、文章だけでは伝わりにくい開発現場の雰囲気や社員の人柄なども届けやすくなります。

採用広報に展開する

採用広報では、企業理念だけでなく、その考え方が生まれた背景や事業への想いを伝えることで、求職者は企業への理解を深めやすくなります。

給与や福利厚生だけでは伝わりにくい企業の価値観まで共有できるため、自社の考え方に共感する人材との接点づくりにも役立ちます。また、企業の考えをあらかじめ伝えることで、企業と求職者の認識のずれを減らし、相互理解にも役立ちます。 

継続的な発信テーマとして運用する

ブランドストーリーは、一度発信して終わるものではありません。プレスリリースやSNS、オウンドメディアなど、日々の情報発信に継続して取り入れることで、企業やブランドへの理解を少しずつ深めてもらえます。

発信するテーマや内容が変わっても、「何を大切にしている企業なのか」という軸が定まっていれば、発信全体に統一感が生まれます。ブランドストーリーは、広報PR活動全体を通じて企業の価値観を伝え続けるための指針となります。

プレスリリースでのブランドストーリーの書き方・注意点

プレスリリースでは、発表内容を正確に伝えたうえで、背景や開発経緯など必要な箇所にブランドストーリーを取り入れることが重要です。ここでは、ブランドストーリーを盛り込む位置や情報量の考え方、書く際の注意点を解説します。

書き方・注意点

どこに書くか(リード文・背景・開発経緯)

ブランドストーリーは、「開発背景」「開発秘話」などの項目に盛り込むと伝わりやすくなります。リード文では発表内容の要点を簡潔に伝え、ブランドストーリーは本文で補足する構成が基本です。

例えば、新商品のプレスリリースでは、「なぜ開発したのか」という背景を開発経緯に加えることで、発表内容の理解を深めやすくなります。ブランドストーリーは情報を補強する役割として活用し、発表内容とのバランスを意識することが大切です。

どこまで書くか(情報と物語のバランス)

プレスリリースの主役は発表内容です。背景の説明が長くなりすぎると、何を発表するプレスリリースなのかが伝わりにくくなります。

まずは発表内容をわかりやすく示し、その内容を理解するために必要な背景を加えることが基本です。ブランドストーリーは事実を置き換えるものではなく、事実の意味を補足するものとして位置付けると、情報と物語のバランスを保ちやすくなります。

NG例:ストーリー過多で情報が弱いケース

ブランドストーリーを意識するあまり、背景説明ばかりが長くなり、発表内容が見えにくくなるケースがあります。例えば、創業時のエピソードが長く続き、新商品や新サービスの内容が十分に伝わらないプレスリリースでは、読み手は発表内容を理解しにくくなります。

ブランドストーリーは、発表内容をより深く理解してもらうための補足情報です。まずは事実を正確に伝え、そのうえで背景や価値観を添えることで、伝わりやすいプレスリリースにつながります。

ブランドストーリー作りでよくある失敗パターンと対策

ブランドストーリーは、内容だけでなく伝え方も重要です。作り方を誤ると、本来伝えたい価値観や背景が十分に伝わらないことがあります。ここでは、よくある失敗と対策を紹介します。

失敗パターン1:美談化しすぎてリアリティがない

成功した出来事だけを強調すると、企業の実態が見えにくくなります。課題や模索の過程も含めて伝えることで、ブランドストーリーに現実味が生まれます。

新商品の開発で模索を重ねた経緯や、事業転換時の判断などを盛り込むことで、企業がどのような価値観を大切にしてきたのかが伝わりやすくなります。成果だけでなく、その過程も含めて伝えることが重要です。

失敗パターン2:顧客視点がなく内向きになっている

ブランドストーリーでは、自社が伝えたいことだけでなく、読み手が知りたいことを意識する必要があります。創業の歴史や企業の想いだけを語ると、読み手にとっての価値が見えにくくなります。

商品開発の背景を伝える場合も、自社の苦労だけでなく、それによって顧客のどのような課題を解決できるのかまで示すことで、読み手にとって意味のあるストーリーになります。

失敗パターン3:一度作って終わりで運用されない

ブランドストーリーは、一度作成して終わるものではありません。創業秘話や開発の背景、顧客とのエピソードなどへ要素ごとに展開し、プレスリリースやコーポレートサイト、SNS、採用広報など複数の情報発信で継続的に活用することで、企業の価値観や姿勢が少しずつ伝わります。

発信するテーマが変わっても、一貫した価値観を軸に情報を積み重ねることで、企業やブランドへの理解を深めていくことが重要です。

ブランドストーリーを広報PRに活用している企業事例

ブランドストーリーはプレスリリースや動画、採用広報、SNSなど、さまざまな情報発信で一貫して伝えることで、企業への理解や共感を深める役割を果たします。ここでは、ブランドストーリーを広報PRに取り入れている企業の事例を紹介します。

事例1.カニカマ誕生の歴史を、能登というアイデンティティにつなげてブランドストーリーとして発信|株式会社スギヨ

石川県七尾市でカニカマを中心に水産加工を手掛けるスギヨは、創業以来受け継がれてきた開発者精神を、ブランドストーリーとして発信しています。

2022年にはカニカマ誕生50周年を機に、開発者への聞き取りをもとにした記念ムービーを制作。さらに2024年の能登半島地震を経て、自社は能登の食文化や人々に育てられてきた企業であるという認識を深め、震災から1年の節目には復興に向き合う地域の姿を描いた続編を公開しました。

カニカマ誕生の歴史を紹介するだけでなく、「能登だからこそ生まれた開発者精神」と「能登の食文化を守る」という企業の意思を結び付け、企業の存在意義まで含めて発信している点が特徴です。

「プレスリリースアワード2025」ではパブリック賞を受賞し、採用広報にも活用されるなど、ブランドストーリーを動画をはじめとする複数の情報発信へ展開しています。企業の歴史や地域との関係性を整理し、現在の発信や組織づくりへ生かしている点は、企業の背景を広報PRに活用する際の参考になります。

インタビュー記事はこちら:カニカマは能登だからこそ誕生した。土地が育てた開発者精神で食文化を未来へ|株式会社スギヨ

事例2.ブランドを自己紹介として伝え、世界観を一貫して発信|株式会社クラシコム

株式会社クラシコムは、「北欧、暮らしの道具店」の世界観や価値観を、自社の自己紹介として整理し、一貫したコミュニケーションに活用しています。ミッションや沿革、経営陣の考えをまとめたファクトブックを作成し、メディアとの対話を重ねながら、自社が何者なのかを言語化してきました。

その考え方は、プレスリリースだけでなく、YouTubeドラマ、Podcast、note、オフィス紹介など、発信する内容や手法にも共通しています。新しい取り組みを始めるたびに、その背景や目的まで伝えることで、一つひとつの発信が企業理解を深める自己紹介として積み重なっています。

こうした継続的な発信により、メディアや取引先、採用候補者など多様なステークホルダーとの関係構築を実現しています。ブランドの世界観を単発の発信ではなく、あらゆる広報PR活動の判断軸として共有し、一貫したメッセージを発信し続けている点は、ブランドストーリーを施策へ落とし込む際の参考になる事例です。

インタビュー記事はこちら:「北欧、暮らしの道具店」とともに。広報PRの“自己紹介”が築くステークホルダーとの心地よい関係|クラシコム株式会社

事例3.創業ストーリーとミッションを軸に、ブランドの世界観を広報PRで伝える|メルティングポットハラペコラボ株式会社

鉱物をモチーフにした琥珀糖「こうぶつヲカシ」を展開するメルティングポットハラペコラボ株式会社は、創業時のケータリング事業から続く「食とアートで人をつなぐ」という思想をブランドの核としています。代表の原体験や、「人生を彩る美しきものを創り続ける」というミッションを軸に、お菓子を単なる商品ではなく「作品」として届ける世界観を築いてきました。

その考え方は、工場を「アトリエ」、製造を「制作」と呼ぶ社内の言葉にも表れており、プレスリリースやSNS、写真表現まで一貫した世界観で発信しています。 また、お客様を「ブランドの世界観を共に楽しむパートナー」と位置付け、SNSで寄せられた声を商品開発にも取り入れるなど、その世界観を生活者とのコミュニケーションにも活用しています。

こうした一貫した発信により、ブランドへの共感やファンの獲得につながったほか、企業向け取引や採用など幅広いコミュニケーションにもブランドの世界観を生かしています。

インタビュー記事はこちら:ものづくりへのこだわりをどう届けるか。世界観を軸にした広報PR|メルティングポットハラペコラボ株式会社

共感されるブランドストーリーを作るための4つのポイント

ブランドストーリーは、共感を生む形に設計できているかどうかが問われます。広報PRで機能させ、企業への理解につなげるために意識したい4つの観点を整理します。

ポイント

1.事実とストーリーの役割を分けて考える

企業で起きた出来事と、その背景にある思いや価値観は、それぞれ異なる役割を持っています。

商品発売やサービス開始、受賞などは事実です。一方でブランドストーリーは、なぜそのサービスを開始したのか、どのような課題を解決したかったのか、といった背景を伝える役割があります。

事実と背景を整理し、それぞれを適切に組み合わせることで、企業らしさが伝わるストーリーになります。

2.「誰に何を持ち帰らせるか」を先に設計する

ブランドストーリーは、読んだ相手にどのような印象を持ち帰ってほしいのかを起点に設計すると、一貫したメッセージになりやすくなります。

「信頼できる会社だと思ってほしい」「技術へのこだわりを知ってほしい」「この会社で働きたいと思ってほしい」など、目指す認識によって選ぶエピソードや伝え方は変わります。

目指すものが曖昧なままでは、出来事を並べただけの説明になり、企業が伝えたい価値は印象に残りません。

プレスリリースや採用広報、SNS、オウンドメディアなどメディアに合わせて表現を変える場合でも、相手に持ち帰ってほしい印象を共通させることで、ブランドへの理解や信頼を積み重ねていけます。

3.「出来事」ではなく「意思決定」を書く

企業らしさは、「何をしたか」よりも「なぜそう判断したのか」に表れます。

新商品の発売や新サービスの開始といった事実だけでは、その企業ならではの価値観は十分に伝わりません。なぜその課題に向き合ったのか、なぜその方法を選んだのかという判断基準を言葉にすることで、企業の理念や考え方が伝わります。

出来事を時系列で並べるのではなく、その背景にある意思決定まで掘り下げることが、共感につながるブランドストーリーを作るポイントです。

4.社員や関係者の声を取り入れてリアリティを出す

ブランドストーリーは、経営者だけの視点で語るよりも、実際に関わる人の言葉が加わることで説得力が増します。

開発担当者や現場社員、取引先などのエピソードを取り入れることで、企業が大切にしている価値観や判断基準が具体的に伝わります。創業時の苦労や商品開発の葛藤など、実際の経験に基づくストーリーは、読み手の共感も得やすくなります。

ブランドストーリーを整理する際は、経営陣だけでなく、社員や関係者へのヒアリングも行い、多様な視点を取り入れると、より立体的なブランドストーリーになります。

まとめ:ブランドストーリーは「語るため」ではなく「伝わるため」にある

ブランドストーリーは、自社の歴史や理念を語るためのものではなく、企業の価値観や存在意義を相手に正しく伝えるためのものです。プレスリリースや採用広報、SNS、オウンドメディアなど発信する場が変わっても、一貫した価値観を伝え続けることで、企業への理解や信頼は少しずつ積み重なっていきます。

まずは自社が何のために存在し、その思いや背景が日々の情報発信に反映されているかを見直してみましょう。次回のプレスリリースでは、取り組みや商品・サービスが生まれた背景を一文添えることから始めるだけでも構いません。その積み重ねをSNSや採用広報、コーポレートサイトにも広げていくことで、ブランドストーリーを軸とした一貫した情報発信につながります。

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この記事のライター

酒井 美和子

酒井 美和子

広報PR歴20年以上。映画や映画祭などの広報を経て、映像関連の上場企業にて12年間、広報担当として従事。某週刊誌報道を起点とする危機管理広報の実務経験あり。現在はプレスリリースの執筆(累計200本超)をはじめ、広報用ビジュアルのデザインやSNSアカウントの運営など、情報発信全般に携わっている。

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