「プレスリリースを配信しても思うような反応が得られない」、「SNSを運用していても新しい層に届いている実感がない」など、認知度を上げたいものの、どこから手をつけるべきか悩む広報PR担当者もいるのではないでしょうか。
認知度向上には、発信量を増やすだけでなく、現在の認知状況を把握し、誰に何を知ってほしいのかを明確にしたうえで、目的に合った施策を選ぶことが欠かせません。本記事では、認知度と知名度・ブランド認知との違いから、認知度が上がらない原因、具体的な広報PR・マーケティング施策、実践ステップ、効果測定の方法、企業事例まで解説します。
認知度とは?知名度・ブランド認知との違いを整理
認知度向上に取り組む前に、まず自社がどのような状態を目指すのかを整理しておく必要があります。名前を知ってもらうことと、事業内容や提供価値まで理解してもらうことでは、必要な情報発信も異なります。ここでは、知名度やブランド認知との違いから、認知度の考え方を整理します。
認知度・知名度・ブランド認知の定義と違い
広報PR活動では、知名度・認知度・ブランド認知を区別して捉えることが必要です。
- 知名度:企業名やサービス名、ロゴなどの存在が知られている度合い
- 認知度:名前だけでなく、どのような事業を展開し、どのような価値や機能を提供しているかまで理解されている度合い
- ブランド認知:独自の強みや魅力などと結びつき、特定のニーズが生じた際に想起される状態
企業名を知っていても、事業内容や商品・サービスの特徴まで理解されているとは限りません。広報PR担当者は、単に名前を知ってもらいたいのか、事業内容や提供価値まで理解してもらいたいのかを整理しておくと、認知度向上で目指す状態を明確にできます。
企業が知名度だけでなく「認知度」を高めるメリット
企業名や商品名を知ってもらうだけでは、商品・サービスを探す際の候補として思い出してもらえるとは限りません。事業内容や特徴、提供価値まで理解されることが、必要になったときに自社を想起してもらうための土台となります。
また、自社がどのような考え方で事業を行い、どのような価値を提供しているのかが伝わることは、企業への理解を深めるうえでも大切です。企業名だけでなく事業内容や強みまで認識されていれば、購買や問い合わせ、採用応募などを検討する際にも、自社を選択肢の一つとして想起してもらいやすくなります。
認知度を上げること自体を目的にせず、その先に期待する行動まで見据えておくことが重要です。誰に何を知ってもらう必要があるのかが、施策を選ぶ際の判断基準です。
認知度が上がらない企業によくある5つの原因
認知度がなかなか上がらない場合、発信量を増やす前に、現在の情報発信のどこに課題があるのかを確認する必要があります。「誰に届けるのかが曖昧なまま発信している」、「企業側が伝えたい情報に偏っている」など、原因はさまざまです。認知度が上がらない主な原因を、5つの観点から見ていきましょう。

原因1.「誰に知ってほしいのか」が定まっていない
できるだけ多くの人に知ってもらいたいと対象を広げすぎると、メッセージの焦点がぼやけ、伝える内容や発信先を選ぶ基準も曖昧になりがちです。
まずは、自社が最優先で認知を獲得したい相手を具体化します。業界関係者なのか、特定ジャンルのエンドユーザーなのか、あるいは採用候補者なのかによって、伝えるべき情報は異なります。その相手がどのような情報を求め、どこから情報を得ているのかまで把握しておけば、発信内容や発信先を選ぶ際の判断材料になります。
原因2.自社が伝えたい情報を発信するだけになっている
自社がアピールしたい商品の特徴やスペックは、生活者やメディア関係者が知りたい情報と一致するとは限りません。企業側の視点だけで情報を発信していると、受け手にとって自分とどのような関係があるのかが伝わりにくくなります。
商品・サービスの特徴だけでなく、社会や生活者が関心を持つテーマと自社の情報との接点を探す視点も必要です。例えば、自社の技術やサービスについて、機能を説明するだけでなく、どのような課題に対応するものなのかまで考えてみます。発信する情報を決める際には、企業側だけでなく受け手の視点からも内容を見直してみてください。
原因3.発信が単発で終わり、継続的な接点をつくれていない
プレスリリース配信やイベント開催などの施策を一度行っただけで活動を止めてしまうと、情報を届けられる相手や機会は限られます。新商品やイベントがあるときだけ発信する体制では、継続的な情報提供も難しくなるでしょう。
新商品・新サービス以外にも、調査データ、顧客事例、社内の取り組みなど、継続して発信できるテーマを持っておくことが必要です。大きなニュースがあるときだけ発信するのではなく、年間を通して情報を届けられる状態を意識します。
原因4.発信チャネルが一つに偏っている
自社Webサイトの更新のみ、公式SNSの投稿のみ、広告のみといった一つのチャネルに依存すると、情報を届けられる相手が限定される場合があります。利用する情報源は人によって異なるため、現在の発信先だけで認知を獲得したい相手に届いているのかを見直してみましょう。
広報PRでは、自社WebサイトやSNSなどの自社発信に加え、メディアを通じて情報を届ける方法もあります。それぞれが誰に情報を届ける役割を担うのかを把握し、特定のチャネルに偏っていないかを確認しておくことが大切です。
原因5.社内に発信できるネタがないと思っている
画期的な新製品がない、特別なイベントがないなどを理由に、発信を止めてしまう企業もあります。しかし、広報PRで扱える情報は、新商品やイベントだけではありません。
例えば、以下のような情報も発信テーマの候補です。
- 既存顧客の声や導入事例
- 社員や社内プロジェクトの取り組み
- 自社に蓄積されたデータ
- 業界に関する知見
広報PR担当者にとって日常的な情報でも、社外へまだ伝えていない内容が含まれていることがあります。発信できるネタがないと判断する前に、営業や開発、人事などにも話を聞き、各部門が持つ情報を探してみましょう。
認知度を上げる方法【広報PR編】
認知度を高めるには、自社からの情報発信に加え、メディアや他社との連携を通じて情報を届ける方法があります。広報PRでは、プレスリリースを起点としたメディア掲載のほか、記者との関係構築や調査リリース、共同企画なども選択肢です。ここからは、広報PR担当者が取り組める6つの方法を見ていきましょう。

プレスリリース配信:メディアを通じて認知を広げる
プレスリリースは、新商品・新サービス、調査結果、企業の取り組みなどをニュースとして発信し、記者や編集者へ届ける方法です。自社のWebサイトやSNSだけでは接点を持ちにくいメディアにも情報を届けられ、記事や番組などで取り上げられれば、その先の読者や視聴者にも情報が伝わります。
ただし、プレスリリースを配信すれば必ず掲載されるわけではありません。商品・サービスの特徴を並べるだけでなく、なぜ今伝えるのか、社会や生活者とどのような関係があるのかを考え、ニュースとして伝える切り口を探してみましょう。
プレスリリースの基本については、下記の記事も参考にしてみてください。
メディアリレーションズ:記者・編集者と継続的な接点をつくる
メディアリレーションズでは、自社の業界や関連テーマを担当する記者・編集者を把握し、継続的に情報を提供します。新商品などのニュースがあるときだけ掲載を依頼するのではなく、業界動向や調査データ、自社が持つ専門的な知見などを提供することも、関係構築の一つです。
まずは、自社に関連する記事や番組から、どの記者・編集部がどのようなテーマを扱っているのかを調べます。相手の関心分野を知り、提供できる情報と相手の関心分野が重なる部分を探すところから始めてみてください。
メディアリレーションズについて詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
自主調査・調査リリース:社会や生活者の関心と自社を結び付ける
自主調査・調査リリースは、社会や生活者の実態を独自に調査し、その結果をニュースとして発信する方法です。商品やサービスを直接訴求するのではなく、自社の事業と関連する社会課題や生活者の変化をデータで示すことで、企業を知ってもらうきっかけをつくれます。
テーマを決める際は、自社の商品を宣伝するためだけの調査になっていないか注意が必要。自社が専門性を持つ領域と社会や生活者の関心が重なるテーマを探し、調査によってどのような実態を明らかにしたいのかを検討します。
調査リリースの作成方法やポイントを知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
記者発表会・体験会などを開催する:メディアとの接点をつくる
記者発表会や体験会は、新商品・サービスなどについて、記者や編集者へ直接情報を伝える機会です。実物を見せたり、商品・サービスを体験してもらったりすることで、文章や画像だけでは伝えにくい特徴を説明できます。開発担当者や経営者が背景や考えを直接伝えられる点も、プレスリリースとは異なる特徴です。
開催する場合は、発表内容だけでなく、誰が説明するのか、何を見せる・体験してもらうのかも決めておきます。記者が取材に必要な情報や素材を持ち帰れるよう、説明資料や画像、商品情報なども用意しておきましょう。
記者発表会の具体的な準備項目や注意点は、下記の記事で詳しく解説しています。
他社との共同企画・コラボレーション:新たな層との接点をつくる
他社との共同企画・コラボレーションでは、共同商品やイベント、キャンペーンなどを企画し、双方から情報を発信します。それぞれが持つ顧客やファンとの接点を生かすことで、自社単独では情報を届けにくかった層にも、企業や商品を知ってもらう機会が生まれます。
相手を選ぶ際は、知名度だけで判断せず、自社との共通点や双方が企画に参加する理由を考えることが大切です。商品特性、地域、顧客層、企業理念など、両社を結ぶ軸が明確であれば、共同企画をプレスリリースやSNSなどで発信する際にも、その背景を伝えやすくなります。
受賞・認定など外部評価を活用する:第三者から評価された実績を発信する
業界団体や公的機関などによる受賞・認定実績は、認知度向上の情報発信に活用できます。受賞・認定という第三者による評価を得た場合、自社だけで商品・技術や取り組みの価値を説明するのとは異なる情報として発信できる点が特徴です。
自社の事業や取り組みに関連する表彰・認定制度を調べ、応募条件や審査基準を確認しておきます。受賞・認定後は実績を記載するだけでなく、何が評価されたのかをプレスリリースや自社Webサイトなどで具体的に伝えることで、第三者評価の内容まで読者に示せます。
認知度を上げる方法【マーケティング・自社発信編】
前章で紹介した広報PR施策のほかにも、SNSやオウンドメディア、広告、動画などを活用して認知を広げる方法があります。それぞれ届きやすい相手や情報の見せ方が異なるため、目的と発信したい相手に合わせて、使う手段を選んでいきましょう。

SNS運用:継続的な発信と双方向のコミュニケーションで接点を増やす
SNSは、企業や商品・サービスの情報を継続的に発信しながら、生活者と直接コミュニケーションを取れる手段です。Instagram、X、TikTok、YouTubeなど、それぞれ利用者層や投稿形式が異なるため、すべてを運用する必要はありません。
まずは、認知を広げたい相手がどのSNSを利用しているのかを確認します。商品情報だけでなく、活用方法、開発の背景、社員の取り組みなど、企業を知るきっかけになる情報も発信できます。コメントや返信を通じて反応を把握できる点も、自社発信ならではの特徴です。
オウンドメディア・SEO:検索行動を捉えて中長期的な認知を蓄積する
オウンドメディアや自社Webサイトでは、検索を通じて自社をまだ知らない人との接点をつくれます。企業名や商品名そのものではなく、顧客が抱える悩みや疑問、業界に関するテーマを起点に記事を作ることで、情報を探している段階から自社を知ってもらう機会が生まれます。
記事を企画する際は、自社が伝えたい内容だけでなく、検索する人が何を知りたいのかを基準にテーマを選びます。専門知識やノウハウの蓄積は、検索流入の入り口だけでなく、メディア掲載やSNSなどで自社を知った人が、企業について詳しく知るための情報源にもなります。
オウンドメディアのメリットや始め方、運用のポイントは、下記の記事で紹介しています。
Web広告・SNS広告:届けたい相手へ情報を届ける
Web広告やSNS広告は、年齢や地域、興味関心などの条件を設定し、自社をまだ知らない人にも情報を届けられる方法です。短期間で一定の範囲に情報を届けやすい一方、配信を続けるには広告費がかかります。
出稿前には、誰に何を知ってほしいのかを決めたうえで、配信対象や訴求する内容を設定します。
動画・ショート動画:視覚や音を生かして企業・商品を知るきっかけをつくる
動画は、文章や静止画だけでは伝えにくい商品の使い方やサービスの流れ、働く人の様子などを、視覚や音を使って伝えられます。
商品デモ、社員インタビュー、製造工程など、見せたほうが伝わりやすい情報がある場合は動画との相性を検討します。長い動画を前提にせず、一つのテーマに絞って短く見せる方法も選択肢です。投稿先に応じて、発信するSNSや動画サービスに合わせて長さや構成を調整してみてください。
口コミ・UGC:利用者の発信を通じて新たな認知を生み出す
口コミやレビュー、SNSへの投稿など、利用者による発信も新たな認知のきっかけになります。企業から発信する情報とは異なり、実際に商品・サービスを利用した人の視点から内容が伝わる点が特徴です。
ただし、UGCの内容を企業側でコントロールすることはできません。投稿を無理に求めるのではなく、感想を共有しやすい商品や企画、ハッシュタグなど、自然に発信できるきっかけを用意する方法があります。投稿された内容を自社SNSなどで紹介する場合は、投稿者への確認や利用条件にも注意が必要です。
費用をかけずに認知度を上げる方法
大きな広告予算がなくても、すでに社内にある情報や既存の発信手段を見直すことで、認知度向上に取り組めます。ひとり広報や少人数体制では、新しい施策を増やすより、すでにある情報や発信手段を有効に使う視点が求められます。費用を抑える分、企画や情報整理、社内調整に必要な工数も見込んでおきましょう。
社内にある情報を発信ネタとして再活用する
毎回新しい企画を考えなくても、社内には発信に使える情報が蓄積されています。顧客事例、社員の取り組み、過去の調査データ、既存商品・サービスの開発背景などを見直し、まだ十分に伝えていない情報がないか探してみます。
一つの情報を一度きりで終わらせないことも、少人数で発信を続けるための工夫です。例えば、プレスリリースで発信した調査結果の一部をSNSで紹介したり、顧客事例を自社Webサイトの記事や営業資料にも展開したりと、一つの情報を複数の用途に活用します。新たに情報を作成する負担を抑えながら、発信機会を増やす方法です。
社内から継続的に情報を集める仕組みをつくる
広報PR担当者だけで発信ネタを探し続けると、情報収集に時間がかかり、現場で起きている変化を把握しにくくなります。営業、開発、人事など、顧客や事業の動きに近い部門から定期的に情報が集まる仕組みをつくっておくと、広報PR担当者だけで情報を探す負担を抑えられます。
大がかりな仕組みをつくらなくても、定例会議で最近の変化を一つずつ聞く、社内チャットに情報共有用の窓口を設ける、簡単な入力フォームを用意するといった方法があります。日常業務の中に情報収集を組み込めれば、ひとり広報でも発信ネタを探す負担を分散しやすくなります。
発信するチャネルを絞り、運用負担を増やさない
費用をかけないために複数のSNSや無料サービスを使い始めても、更新作業が増えれば広報PR担当者の負担は大きくなります。限られた人員で継続するには、すべてのチャネルを運用するのではなく、目的に合った発信先へ優先順位をつけることが必要です。
認知を広げたい相手がどこで情報を得ているのか、自社が無理なく続けられるのはどのチャネルかを確認します。例えば、複数のSNSを少ない頻度で更新するより、相性のよいSNSと自社Webサイトに絞る方法もあります。無料で使えるかだけでなく、運用に必要な時間まで含めて選んでみてください。
無料で使えるプレスリリース枠や既存の接点を活用する
新たな広告費をかける前に、無料で利用できるプレスリリース配信の仕組みや、自社がすでに持っている発信手段や社外との接点を見直してみましょう。前章で紹介した施策の多くも、費用をかけずに始められるものが含まれていますが、ここでは「新しく何かを始める」ではなく「今あるものを最大限に活かす」視点に絞って整理します。
無料の仕組みであっても、配信するだけで認知が広がるわけではありません。プレスリリースであればニュースとして伝える切り口を考え、既存顧客や取引先へ届ける場合は相手にとって関係のある情報かを見極めます。まずは現在利用している発信手段や社外とのつながりを洗い出し、追加費用をかけずに情報を届けられる接点がないか探してみてください。
認知度向上施策の進め方
認知度向上の施策は、すぐに実行へ移すのではなく、現状を把握したうえで、誰に何を知ってほしいのかを定めることから始めます。そのうえで目的に合った施策を選び、継続して発信できる体制を整え、結果を次の施策へ反映していく流れが基本です。ここでは、認知度向上に取り組む手順を5つのステップで解説します。

STEP1.現在の認知度と課題を把握する
まず、自社が現在どの程度知られているのかを把握します。指名検索数やWebサイトへの流入、SNSでの言及、メディア掲載状況など、すでに取得できるデータから見ていきましょう。必要に応じて、顧客アンケートや認知度調査を行う方法もあります。
このとき、数値の大小を見るだけでなく、どこに課題があるのかを整理することが大切です。例えば、企業名は知られていても事業内容が十分に理解されていない場合と、そもそも企業名が知られていない場合では、取り組むべき施策が異なります。現状と課題を切り分け、認知度向上によって何を変えたいのかを明らかにしておきます。
STEP2.誰に・何を知ってほしいのかを明確にする
現状の課題が見えたら、次に認知を獲得したい相手と、知ってほしい内容を定めます。生活者、取引先、業界関係者、採用候補者など、対象によって必要な情報や情報収集の方法は異なります。
誰に知ってほしいのかを決めたうえで、企業名だけなのか、商品・サービスの特徴なのか、技術力や企業姿勢まで理解してほしいのかを具体化します。さらに、その相手がどのような課題や関心を持ち、普段どこから情報を得ているのかまで確認しておくと、次のステップで施策や発信先を選ぶ基準が明確になります。
STEP3.第三者発信と自社発信を組み合わせて施策・チャネルを選ぶ
誰に何を伝えるのかが決まったら、目的に合う施策とチャネルを選びます。プレスリリースやメディアリレーションズなど第三者を通じて情報を届ける方法と、SNSやオウンドメディア、広告など自社で発信する方法を整理し、それぞれの役割を考えます。
すべての施策を同時に行う必要はありません。例えば、プレスリリースで発信した情報を自社SNSでも紹介し、Webサイトに詳しい情報を掲載するなど、一つのテーマを複数の接点で届ける方法があります。予算や人員、運用にかかる時間も踏まえ、継続できる施策から優先順位をつけます。
STEP4.発信の形式と社内体制を整えて実行する
施策が決まったら、発信する情報の形式やスケジュール、担当者、承認フローまで具体化します。広報PR担当者だけで情報を探して発信するのではなく、営業や開発、人事、経営層などから必要な情報が集まる体制づくりも欠かせません。
施策ごとに原稿作成から社内チェック、発信までの流れを明確にし、関係部署には確認事項と期限をあらかじめ共有しておきましょう。実行までの手順が決まっていれば、担当者間の確認漏れや進行の停滞も防ぎやすくなります。
STEP5.KPIを確認し、施策を改善する
施策を実行した後は、設定した目的に応じて結果を確認します。メディア掲載数や掲載先、指名検索数、SNS上の言及数、Webサイトの新規訪問数、認知率など、認知状況を捉える指標は複数あります。
単月の数値だけを見るのではなく、施策の実施前後や一定期間での変化を比較します。その結果をもとに、どの発信テーマやチャネルを継続するのか、どこを見直すのかを判断し、次の施策へ反映します。具体的な指標の選び方や測定方法については、次章で詳しく解説します。
認知度向上の成果を測る指標と測定方法
認知度向上の成果を見るときは、メディア掲載数やSNSのフォロワー数など、一つの数値だけで判断しないことが大切です。どの程度情報が広がったのかに加え、企業や商品・サービスについてどこまで理解されているのかも見る必要があります。目的に合った指標を設定し、一定期間ごとの変化を比較していきましょう。
認知度は「広がり」と「深さ」の両面で測る
認知度は、情報がどれだけ多くの人に届いたかという広がりと、企業名や商品名だけでなく、事業内容や特徴、提供価値まで理解されているかという深さの両面から捉えます。
例えば、メディア掲載やSNS投稿によって多くの人に情報が届いていても、企業名だけが知られ、何をしている企業なのか理解されていない場合もあります。一方、情報が届いた範囲は限られていても、事業内容や強みまで理解されている場合もあるでしょう。すべてを一つの数値で表そうとせず、目的に応じて複数の指標を組み合わせて見ることが大切です。また、一時点の数値だけで判断せず、同じ指標を継続して追うことも欠かせません。
メディア掲載・指名検索・SNS上の言及などから情報の広がりを測る
情報の広がりを見る際は、メディア掲載数や掲載先、企業名・商品名の指名検索数、SNS上の言及数、Webサイトの新規訪問数などが指標として挙げられます。プレスリリース配信やキャンペーンなど、施策の実施前後で数値がどのように変化したのかを比較します。
掲載数だけでなく、どのようなメディアで、どのような内容が取り上げられたのかも見ておきたいところです。SNSでも投稿数だけを追わず、企業や商品について言及されている文脈まで確認します。数値と実際の掲載・投稿内容をあわせて見ることが、情報の広がり方を捉える手がかりです。
アンケート調査などで認知率の変化を測る
事業内容や特徴まで理解されているかを調べる方法の一つが、アンケート調査です。企業名や商品名を知っているかだけでなく、どのような企業だと思うか、どのような特徴を知っているかなども尋ねることで、名前の認知だけでは捉えにくい理解の程度も見えてきます。
変化を追う場合は、施策の実施前後や一定期間ごとに、できるだけ同じ対象・設問・条件で調査します。大規模な調査が難しければ、顧客アンケートなど既存の調査機会に認知に関する設問を加えるのも一案です。自社が目指す認知の状態に合わせて質問を設定し、認知率だけでなく、事業内容や特徴への理解がどう変化したのかも比較しましょう。
認知度向上に成功した企業の事例3選
認知度向上の取り組み方は、企業が抱える課題や目指す状態によって異なります。ここでは、調査や情報発信、商品開発などを通じて認知度向上に取り組んだ企業3社の事例を紹介します。
事例1.渡辺パイプ株式会社|認知不足という採用課題に、CMと継続的な情報発信でアプローチ
住宅設備機器などを扱う専門商社の渡辺パイプ株式会社は、業界内では認知されている一方、一般的な認知度の低さが採用市場での課題となっていました。毎年約250名を採用していましたが、社内目標の300名には届かず、認知が広がるのを待つ広報から、自ら情報を届ける広報への転換を図ります。
そこで、採用時期に合わせたテレビCMなど、目的やタイミングを意識した情報発信を展開。2026年3月にはWBC中継でCMを放送し、社内にある情報も継続的に発信するなど、複数の施策を組み合わせました。こうした取り組みを進める中、採用エントリー数は前年比約2倍に増加しています。認知不足を広報だけの課題とせず、採用という事業上の課題から施策を設計した事例です。
事例2.BtoB製造業 株式会社ジェイテクト|認知の量と質を調査し、課題に応じて情報発信を強化
BtoB製造業の株式会社ジェイテクトでは、広報PR戦略を考える起点として、自社に対する認知の程度と内容を把握しています。年2回、約2,400人を対象としたインターネット調査を実施し、同業他社などとの比較や、年齢・性別・職業・地域ごとの分析を行っています。その結果、中部エリア以外、特に関東・関西で認知度が低いことや、同社が目指す企業像が十分に伝わっていないことが課題として見えてきました。
こうした現状を踏まえ、同社は新たなメディアとの関係構築やプレスリリース配信など、情報発信を強化しています。また、認知を社名のみ、社名と事業、目指す姿まで理解している状態など段階的に捉え、量だけでなく質も重視。調査によって現在地を把握し、明らかになった課題をその後の情報発信に反映することで、認知度測定を広報PR活動の改善に生かしています。
事例3.まくら株式会社|届けたい相手から逆算し、商品開発とプレスリリースを一体で設計
まくら株式会社は、ほとんど広告に頼らず、広報PR活動を軸に事業を成長させてきました。一方、商品が完成してからプレスリリースや販売方法を考えていた当初は、商品が売れないこともあったといいます。そこで、商品をつくってから届け方を考えるのではなく、誰にどのような言葉で届けるかを企画段階から考える方法へ切り替えました。
現在は、商品を求めている人が検索する言葉やプレスリリースのタイトルを先に考え、商品企画にも反映しています。これまでに600本以上のプレスリリースを配信しており、最初の配信時には毎週のようにテレビ取材が入り、その報道を見た別のメディアから取材依頼が寄せられることもありました。届けたい相手を起点に商品開発と情報発信を一体で考え、プレスリリースを継続的に活用してきた点が特徴です。
認知度向上でよくある失敗パターンと対策
認知度向上の施策は、実行して終わりではありません。情報が届いた後の導線が整っていない、施策を増やしすぎて継続できないなど、運用の仕方によって十分に生かせないことがあります。ここでは、認知度向上に取り組む際に起こりやすい5つの失敗と、その対策を確認します。
失敗パターン1.認知を獲得した後の行動導線を用意していない
メディア掲載やSNSで企業や商品を知ってもらえても、その後に詳しい情報を確認できるページや問い合わせ先がわかりにくければ、次の行動へ進みにくくなります。
施策を始める前に、認知を獲得した後にどのような行動を取ってほしいのかを決めておきます。商品ページへの訪問、問い合わせ、資料請求、採用応募など、目的に応じて必要な情報と導線を整理しましょう。プレスリリースやSNSからリンクするページについても、発信内容と受け皿となる情報にずれがないか、あらかじめ見直しておきます。
失敗パターン2.多くの施策に手を広げ、継続できなくなる
認知度を上げようと、SNS、プレスリリース、広告、オウンドメディアなどを一度に始めると、運用に必要な人員や時間が不足することがあります。更新が止まったり、一つひとつの施策に十分な工数を割けなくなったりすることも考えられます。
まずは、誰に何を届けるのかをもとに施策の優先順位を決めます。企画、制作、確認、効果測定まで含めて必要な工数を洗い出し、自社の体制で無理なく続けられる範囲から始めることが現実的です。
失敗パターン3.チャネルごとの役割を分けず、同じ情報を発信している
プレスリリース、SNS、オウンドメディアなどで、同じ文章や情報をそのまま発信しても、それぞれの特徴を十分に生かせません。伝えるテーマは共通していても、相手や目的に合わせて情報の見せ方を変える必要があります。
例えば、プレスリリースではニュースとしての背景を伝え、SNSでは要点を簡潔に紹介し、自社Webサイトでは詳細な情報を掲載するなど、役割を分ける方法があります。それぞれの発信先で誰に何を伝えるのかを決め、同じ情報でも内容や見せ方を調整することがポイントです。
失敗パターン4.数値を確認するだけで改善につなげていない
メディア掲載数やWebサイトのアクセス数、SNSの反応などを記録していても、数値を見るだけでは次の施策を判断する材料として十分に活用できません。どの発信の後に変化があったのか、反応が弱かった施策にはどのような違いがあったのかまで振り返ります。
施策ごとに発信テーマ、切り口、発信先、実施時期と結果を記録しておくと、比較しやすくなります。数値の増減だけで評価せず、結果と実施内容を照らし合わせ、次に継続することと見直すことを決めていきます。
失敗パターン5.広報の成果を社内で共有せず、協力が続かない
広報PR活動では、営業や開発、人事、経営層など社内の協力が必要な場面があります。掲載結果や社外からの反応を広報PR担当者だけで把握していると、情報提供や取材対応に協力した部門には、その後どうなったのかが伝わりません。
メディア掲載や問い合わせ、顧客から寄せられた反応などは、関係部署にも共有します。提供してもらった情報がどのように発信されたのかまで伝えることで、広報PR活動と各部門の業務との関係も示せます。社内への結果共有までを広報業務に組み込み、次の情報提供や企画への協力を得られる関係をつくっておきましょう。
まとめ:認知度向上は届けたい相手と目的を定め、継続的な情報発信と検証を重ねる
認知度向上で大切なのは、できるだけ多くの人に名前を知ってもらうことではなく、必要な相手に自社の事業内容や提供価値まで理解してもらうことです。そのためには、誰に何を知ってほしいのかを明確にし、目的に合った方法で情報を届けることが欠かせません。
また、一度のプレスリリース配信やSNS投稿、メディア掲載だけで判断せず、継続して情報を発信しながら、認知の広がりと深さがどのように変化したのかを確認します。結果を振り返り、発信するテーマや方法を見直すことで、その後の広報PR活動にも生かせます。
まずは指名検索数やWebサイトへの流入、メディア掲載状況など、現在確認できるデータから自社の認知状況を把握してみてください。そのうえで、誰にどこまで理解してもらいたいのかを具体化することが、認知度向上施策を考える出発点です。
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