本稿は、梶原麻美子氏による寄稿です。
「良いものを作っているのに、なかなか知られていない」という悩みを、地方では本当によく耳にします。香川県で広報PR支援に携わる中で、素晴らしい技術や熱意があるのに、伝え方ひとつで機会を逃しているケースを多く見てきました。
本記事では、地方企業が広報PRを始める前に知っておきたい3つの視点を解説。自社の当たり前を価値に変え、明日から動き出すための一歩に役立ててもらえたら嬉しいです。

合同会社higoto 代表
梶原 麻美子アパレルメーカーで広報・ECを経験後、WEBマーケティング分野で独立。2019年に香川へUターンし、2021年に合同会社higotoを設立。PRを軸に、企画・デザイン・発信まで一気通貫で支援。 地方で挑戦する中小企業・事業者のためのPRパートナーとして中長期的な伴走・育成を行っている。 また、縫製のまち・香川県東かがわ市の革の端材を活かすアップサイクルブランド「PLUS CARAT」も運営。自らも地域資源と向き合いながら、「PRで想いを価値に変える」を実践中。2025年10月より、株式会社PR TIMES公認「プレスリリースエバンジェリスト」としても活動。
1. 地方企業の広報PRが止まってしまいがちな3つの主な原因
地方の現場で事業者さんから、「うちは小さいから」「すごい実績なんてない」「発信できるものがない」という言葉を、とにかくよく聞きます。でも、広報PRがうまくいかない原因は、会社の規模でも、実績の凄さでもないんです。まずは、発信のブレーキになっている3つのポイントを整理しました。

①毎日向き合う「当たり前」の中に眠る魅力に気づけていない
例えば、私が活動拠点としている香川県は製造業も多く、職人さんのこだわりや毎日の工夫は、自分たちにとっては日常の風景。でも、外から見ればその背景こそが魅力的なストーリーになります。地域に根ざした歴史や素材への想いは、都会には真似できない価値を持っています。
②「みんなに届けたい」が強く、伝え方が整っていない
「とにかく広く知ってほしい」という気持ちはわかりますが、対象が広すぎると言葉はぼんやりしてしまいます。広報PRは届ける相手を絞るほど、相手の心に刺さるようになります。まずはたったひとりの顔が浮かぶくらい具体化することが共感への近道です。
③露出した後の受け皿がなく、次の行動につながらない
メディアに出たり、SNSで反応があったりするのは、あくまで入口。せっかく興味を持ってくれたのに、問い合わせフォームが見つけにくい、購入ページが使いにくい、Googleマップの情報が古いなど、受け皿が整っていないと次のアクションへのチャンスを逃してしまいます。露出の前に、出口の設計もセットで考えたいですね。
2.PRと広告はどう使い分ける?押さえておくべき2つの役割
現場では、PRを自己アピールと捉えられていたり、「PRと広告って何が違うの?」と聞かれたりすることも多々あります。広告とPRは対立するものではなく、組み合わせることで効果を高められます。
ただし、PRを広告のように短期的な成果だけで評価してしまうと、続ける前にやめてしまったり、適切な進め方を見失ったりする可能性があります。だからこそ、それぞれの役割を整理しておくと、限られた予算や時間をどこに使うべきか、判断しやすくなります。
①短期間で集客や告知をしたいなら広告
広告は費用をかけて、狙った相手にダイレクトに情報を届けることができる手段です。「新店オープン」や「期間限定キャンペーン」など、今すぐ動いてほしい場面で力を発揮しやすいと考えています。自分の言葉をしっかり届け、期間や露出量をコントロールしやすいのが最大のメリットです。
②中長期で信頼を積み上げファンを増やしたいなら広報PR
一方の広報PRは、企業の価値を必要な人に届け、信頼を積み上げていく活動です。背景にある「想い」が伝わることで、単なる認知ではなく深い信頼に変わります。商品やサービスのファンづくりはもちろん、採用難の解消や、長く付き合えるパートナー探しにも、広報PRの力が欠かせません。
そして広告は、出稿を止めると露出がなくなりますが、広報PR通じて築いた信頼や資産(例:プレスリリースやnoteやSNSなどのコンテンツ)は、会社の財産として残り続けます。
3. 地方企業が広報PRを始める前に知っておきたい3つの視点
それでは、具体的な発信を始める前に、まずはその土台となる「視点」をインストールしておきましょう。この3つの視点を自分たちの中に持っておくだけで、プレスリリースもSNSも、何を伝えればいいか迷ったときの道しるべになります。
①自社の魅力を相手の日常に馴染む言葉に翻訳する
強みを専門用語で並べるのではなく、相手の頭の中に「情景」が浮かぶ言葉を選んでみてください。
例えば、製造現場で出る「革の端材」も、そのままではゴミに見えるかもしれません。しかしこれを、「世界にひとつだけの希少素材」と翻訳してみる。あるいは、「糖度15度のイチゴ」を、「練乳がいらないくらい、感激する甘さのイチゴ」と言い換えてみる。
スペック(仕様)を語るのではなく、それが「相手の日常をどう良くするのか」を意識するのが翻訳のコツです。歴史の凄さや技術の高さを「使う人の未来」へのメリットに変換することで、情報は初めて相手にとっての「自分事」に変わります。
②ストーリーを語って「紹介」を「応援」に変える
「なぜ今、この土地でやるのか」「なぜ今、この会社がやるのか」といった背景には、人を動かす力があります。さらにストーリーは成功談だけでなく、苦労や失敗、試行錯誤の過程も応援したくなる材料です。そうした背景を丁寧に伝えたことで、想定外のコラボや取材につながった事例もあります。物語があるからこそ、人は単なる消費者ではなく、あなたの企業の「応援団」になってくれるのです。
③ターゲットを属性ではなく「その人の状況」で具体化する
「30代女性」といった属性よりも、その人が置かれている「状況」や「心が動く瞬間」を描いてみましょう。
例えば、高品質なレトルト食品を届ける相手を考えるとき。「共働き世帯」という括りではなく、「仕事で疲れ果てて帰宅したけれど、家族にはちゃんとしたものを食べさせたいと自分を責めている人」と状況を絞り込んでみる。
そうすることで、かけるべき言葉は単なる「時短」ではなく、「たまには頼ってもいいんだよ」という共感のメッセージに変わるはずです。シーンが具体的になれば、届けるべきイメージや言葉も自然と見つかります。

4. 広報PRを今日から一歩進めるための3つのステップ
視点がインストールできたら、あとは動くだけ。完璧を目指して足が止まるより、まずは小さなアクションから始めてみるとよいでしょう。広報PRの活動は小さくても一つひとつのコンテンツが資産であり、その積み重ねが大切です。
①自社にとっての「当たり前」を10個書き出してみる
まずは棚卸しからスタート。自分たちが「普通」だと思っている習慣や工程の中に、外から見ると「すごい!」と言われるお宝がきっと眠っています。
やり方は自由です。ポストイットに思いつくまま書き出して壁に貼ってみるのもいいですし(おすすめ)、AIと壁打ちをしながら「これって珍しい?」と投げかけてみるのも面白いですよ。一見、広報PRとは関係なさそうな「こだわり」や「創業時の苦労話」も、すべて書き出してみてください。その中に、誰かの心を動かす魅力の種が隠されています。
②誰に何を届けたいのかを言語化してみる
棚卸しをしたうえで、誰に何を届けたいのか、それによって何を叶えていきたいのかを言語化してみましょう。いわゆるミッション・ビジョンと言われるものですが、難しく考える必要はありません。まずは「誰に喜んでほしいのか」を言葉にするだけで十分です。事業を進めるうえで広報PRの視点を入れる大きなメリットは、この「自社の想いを言葉にできること」そのものにあるからです。
③対話で「どこに驚いたか」を聞いてみる
棚卸しした魅力を、業界の事情を知らない人に話してみてください。相手が「へぇ、そんなに手間をかけてるの?」と驚いたポイントこそが、世の中が求めている価値です。自分たちの「普通」が、外の世界では「特別なストーリー」に変わる瞬間を、対話の中で見つけてみましょう。

まとめ:地方企業の広報PRは、「当たり前の言語化」から
地方企業の広報PRにおいて大切なのは、何かすごいことを新しくつくることではなく、まずは今ある良さを「伝わる形」に整えることです。今回のポイントを振り返ります。
- 広報PRが止まる原因は魅力の埋没や受け皿の不足にある
- 広告は「短期の爆発力」、広報PRは「中長期の信頼作り」と役割を使い分ける
- 「翻訳・ストーリー・状況」の3つの視点で発信の土台を固める
- はじめの一歩は、当たり前の棚卸し、言語化、対話テストの3つから
自社の価値を丁寧に言語化することは、単なる情報発信以上の意味を持ちます。社内での共通言語ができ、社外からは共感の視線が集まる。そんな風に、会社を取り巻く「縁」の質が少しずつ変わっていく過程を、広報PRの視点は支えてくれると信じています。
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